2023年11月の「SHARP Tech-Day」でコンセプトを発表したCE-LLMは、Communication Edgeとある通り、シャープが「暮らす」と「働く」の2つの領域で展開する多数のハードウェア製品とそれらを使うユーザーのインタフェースを担うエッジAI技術である。「スマートライフBGで1000万台以上、スマートワークプレイスBGで1000万台以上の機器を展開しており、ユーザーの皆さまとの接点を有している。これらのハードウェア製品に向けて、他社に先駆けてエッジAI技術を開発できることが強みになる」(種谷氏)という。
また、LLMの小型化と性能向上、エッジデバイス向けのプロセッサの高性能化が同時に進み、先述したようなエッジAIの進化が加速することはシャープにとってエッジAIの活用を広げる機会となり得る。
ただし、エッジAIのプロセッサやLLM、応用サービスまで全てをシャープ単独で開発することは現実的ではない。種谷氏は「巨大テックカンパニーが、汎用ロボットや自動運転車などの“フィジカルAI”をはじめとするエッジAIデバイスの開発に注力しつつある中で、シャープがAIの世界でどのように戦っていくのか、特化していくのかが大きな命題になる」と強調する。
そこでCE-LLMは、ユーザーとの接点を持つ多数のハードウェア製品を強みとして「現場や個人にフィットしたエッジAIの使い方を提供できることが最大の価値になる」(種谷氏)という。CE-LLMの構成としては、商品やサービスに最適なLLMを選定して組み込めるLLMインタフェースを基盤として用意する。LLMについては、クラウドLLMとエッジLLMを連携できるようにしつつ、差し替えも適宜行えるようにする。
この他、エッジでの利用で重視される「会話の応答性」「会話の品質」「プライバシー確保」「通信量の抑制」に役立つ機能ソフトウェアモジュール群を用意する。さらに、ユーザーごとの最適化を可能にする技術として「環境プロンプト」を開発中である。「ユーザーの現状や少し前からの経過などをLLMが理解した上で、ユーザーに適切に対応できるようにする仕組みだ」(種谷氏)。
なお、CE-LLMを適用した商品やサービスとしては、2025年2月発表の会議の議事録を自動で作成する「eAssistant Minutes」、同年5月発表のホテル向け対話型コンシェルジュサービス「eAssistant Concierge」、6月発表のオーブンレンジ「ヘルシオ」向けサービス「クックトーク」などを展開している。また、シャープが開発を進めているEV(電気自動車)コンセプト「LDK+」にもCE-LLMを適用し、快適な車室内空間におけるAIの素早い応答や快適なインタフェースの実現に役立てる方針である。
種谷氏は「今後はB2B、B2Cの両方で四半期に1つ以上のAIを活用した製品やサービスを投入していく」と述べている。
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