量子優位性の達成に向け、30%性能を向上した最新プロセッサと技術成果を発表量子コンピュータ

IBMは、将来の量子優位性達成とフォールトトレラント量子コンピュータ提供に向けた取り組みを発表した。また、新プロセッサ「IBM Quantum Nighthawk」「IBM Quantum Loon」などを公開した。

» 2025年11月28日 14時00分 公開
[MONOist]

 IBMは2025年11月12日(現地時間)、量子コンピューティングに関する年次イベント「Quantum Developer Conference」で、2026年末までの量子優位性達成と2029年のフォールトトレラント量子コンピュータ提供に向けた取り組みについて発表した。

キャプション 量子優位性達成とフォールトトレラント量子コンピュータ提供に向けた取り組みについて発表[クリックで拡大] 出所:IBM

 新プロセッサ「IBM Quantum Nighthawk」は120個の量子ビットを搭載し、従来比で30%複雑な回路を実行できる。また、218個の次世代チューナブルカプラーにより接続性を向上し、最大5000の二量子ビットゲートを実行する。

 IBM Quantum Nighthawkは、2025年末にはユーザーへの提供が開始される。今後のバージョンは2026年末に7500ゲート、2027年に1万ゲートの実行が見込まれており、2028年には長距離カプラーを用いた1000以上の量子ビットを接続して、最大1万5000の二量子ビットゲートに対応する。

 さらにIBMは、量子優位性を検証するため、コミュニティー主導のトラッカーに実験データを提供し、パートナー企業とともに古典シミュレーション手法との比較検証を進めている。

 ソフトウェア面では、量子ソフトウェア基盤「Qiskit」に動的回路の新機能を追加し、100量子ビット規模で24%の精度向上を達成。HPC(高性能コンピューティング)によるエラー緩和を強化し、正確な結果の取得にかかる計算コストを100分の1以下に削減した。C-APIを基盤としたC++インタフェースにより、HPC環境での量子プログラミングも強化する。

 併せて進めているフォールトトレラント量子計算に関しては、新プロセッサ「IBM Quantum Loon」を公開した。IBM Quantum Loonは量子エラー訂正の構成要素を実証するプロセッサで、遠距離接続を可能にするオンチップ配線層や量子ビットの高速リセット機能を備える。また同社は、qLDPCコードを用いてリアルタイムエラーデコードを480ナノ秒未満で実行可能なことを実証した。当初計画より1年早く、既存手法比で10倍の高速化を達成したことになる。

 製造施設の移行についても発表があった。米国ニューヨーク州の300mmウエハー製造施設に量子チップ製造を移行したことで、新プロセッサの製造時間が半減した。開発スピードは2倍になり、製造可能な量子チップの物理的な複雑さは10倍に拡大している。また、同施設では複数のチップ設計を並行して検証できる体制が整っている。

 IBMは、量子ソフトウェア、ハードウェア、エラー訂正、製造技術の各領域を統合し、量子優位性とフォールトトレラントなシステム構築への取り組みを継続するとしている。

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