IBMと東京大学は、127量子ビットの量子チップである「IBM Quantum Eagle」を搭載したゲート型商用量子コンピュータ「IBM Quantum System One with Eagle プロセッサー」を2023年秋ごろに国内で稼働開始すると発表した。
IBMと東京大学は2023年4月21日、127量子ビットの量子チップである「IBM Quantum Eagle」(以下、Eagle)を搭載したゲート型商用量子コンピュータ「IBM Quantum System One with Eagle プロセッサー」を2023年秋ごろに国内で稼働開始すると発表した。Eagleを搭載したIBM Quantum System One(System One)の稼働は、北米以外の地域で初めてだという。
Eagleを搭載したSystem Oneは「新川崎・創造のもり かわさき新産業創造センター(KBIC)」(川崎市幸区)で稼働予定だ。東京大学は、KBICで稼働するSystem One(Eagle搭載)のアクセス専有権を持つ契約をIBMと締結している。同大学が2020年に設立した、量子技術の社会実装を目指す「量子イノベーションイニシアティブ協議会(QII協議会)」の参画企業や公的団体などと共に専有利用する計画だ。
なお、KBICでは27量子ビットの量子チップ「Falcon」を搭載したSystem One「kawasaki」が既に稼働しているが、今回のEagleとの関わりについては明らかにしていない。
東京大学 理事・副学長の相原博昭氏は、「(Eagleの搭載によって)世界最高性能のスーパーコンピュータでもシミュレーションできない領域まで計算範囲を広げられる。本学を中心に国内の共同研究機関が専有して利用することで、量子コンピュータと古典コンピュータの効率的なハイブリッド計算方法や、実用的なアプリケーションの開発が可能になる。最大限利活用することで、素粒子、物性、創薬、AI(人工知能)、金融などの重点分野の研究を進展させるとともに、量子によるイノベーションをもたらしていく」と語った。
また、IBM フェロー 兼 IBM Quantum バイス・プレジデントのジェイ・ガンベッタ氏は「127量子ビットシステムはこれまで実行されたものを超える複雑な量子回路の探求が可能になる。動的回路を活用してさらに拡張することもできる。さらに、Eagleを活用すれば100量子ビットかつ100個のゲートを備えた100×100で構成される量子回路の探求が可能になる。これが次の挑戦だ」と説明した。
報道陣からは、今後の量子コンピュータ開発の発展に必要な要素についての質問が出た。これに対して相原氏は「大学として、一番重要なのは量子技術を担う人材育成と考えている。アルゴリズム開発と共に技術を使用していく次世代の人材を育てていく」と回答した。一方で、ガンベッタ氏は「一番難しいのは、産業界や科学におけるさまざまな問題を、量子コンピューティングの回路にどのようにマッピングしていくかということだ」と答えた。
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