スバルの2024年度のグローバル生産は、前年度比2.4%減の94万6204台と3年ぶりに前年実績を下回った。前年が半導体不足の解消で高水準の増産を行っていた反動が表れた格好で、唯一の海外拠点である米国生産は同6.3%減の34万4630台と3年ぶりのマイナスだった。ただ、北米の販売自体は好調で、米国が新型「フォレスター」などの増加で同6.2%増、カナダは同8.5%増と伸長し、年度販売の過去最高を更新した。国内生産は、前年度から288台少ない60万1574台と前年並みで、3年ぶりのマイナスとなった。
2025年3月単月のグローバル生産台数は、前年同月比4.8%減の7万3430台と2カ月ぶりのマイナス。国内生産は、前年が2月に群馬製作所矢島工場(群馬県太田市)で発生した死亡事故を受けて生産ペースを落としていたことの反動により、同23.0%増の5万2052台と2カ月連続の増加。一方、海外生産は、同38.6%減の2万1378台と大幅に減らし、5カ月連続のマイナス。これは一部の部品で供給遅れが発生したためとしている。
グローバル販売のうち米国が7割を占めるスバルも追加関税の影響を避けられない見通しで、関税影響を踏まえ2025年度通期の連結決算見通しは未定とした。米国販売の半数程度を現地生産しているが、部品を含めて日本からの輸入に頼らざるを得ない状況となっている。「米国での生産拡張を考えている」(スバル 専務執行役員の江森朋晃氏)というものの、米国工場はこれまで能力増強を繰り返してきた結果、すでに年産40万台規模の能力を誇る。工場の規模や従業員の確保、サプライチェーンなどを含めて、さらなる能力増強は容易ではなさそうだ。
三菱自動車も厳しい結果となった。2024年度のグローバル生産台数は、前年度比10.0%減の90万9743台と3年連続で前年実績を下回った。8社の順位ではスバルを下回り最下位だった。要因は海外生産の低迷で、同15.6%減の43万1378台と3年連続のマイナス。減少幅も8社で最も落ち込んだ。フィリピンやベトナムは過去最高の販売を記録するほど好調で、インドネシアも同2.6%増と回復したものの、主力のタイが経済低迷やローン審査の厳格化などにより同27.1%減と大幅減となった。その結果、アジアトータルでも同15.8%減となった。
国内生産は、前年度比4.2%減の47万8365台と4年ぶりに減少へ転じた。国内向けでは、2023年5月に投入した軽自動車の新型車「デリカミニ」が高い人気で台数を伸ばした他「デリカD:5」も好調だったものの、「エクリプスクロス」が低迷した他、日産にOEM(相手先ブランドによる生産)供給するEV「サクラ」が大幅に減少したことが響いた。さらに輸出もアジアや欧州向けが減少し、同1.7%減と2年ぶりに減少した。
足元でも厳しさは変わらない。2025年3月単月のグローバル生産は、前年同月比12.3%減の7万3747台と14カ月連続のマイナス。8社で最も大きな落ち込みとなった。中でも海外生産は、同24.5%減の3万2651台と5カ月連続で減少した。タイは同52.0%減と半減し依然として低迷しているが、インドネシアは同91.6%増と倍増。アジアトータルでは同25.6%減という結果だった。
国内生産は、前年同月比0.6%増の4万1096台と8カ月ぶりにプラスへ転じた。デリカミニは前年実績が高かったこともあり減少したが、大幅改良を実施したアウトランダーPHEVに加えてデリカD:5などが好調だった。輸出では欧州向けは大幅増だったが、北米向けやオセアニア向けが落ち込み、同21.6%減と3カ月ぶりのマイナスとなった。
三菱自動車も米国の追加関税の影響を避けられない。米国の販売台数はグローバル販売のうち13%程度だが、三菱自動車は米国に生産拠点を構えておらず、日本などから全量輸入している。アウトランダーなど米国販売車両は台当たりの利益率も高く、台数以上に業績への影響が大きい。このため三菱自動車はアライアンスを組む日産と協業し、日産の米国工場に共に投資してSUVを共同生産する検討を開始した。販売の伸び悩みで工場稼働率を高めたい日産にとっても朗報といえそうだ。
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