2024年度の新車生産はスズキのみ増加、グローバル生産体制に転機自動車メーカー生産動向(4/5 ページ)

» 2025年05月29日 10時00分 公開
[MONOist]

日産自動車

 国内外ともに厳しい状況なのが日産だ。2024年度のグローバル生産台数は、前年度比10.1%減の304万8717台と2年ぶりに前年実績を下回った。このうち国内生産は、同11.5%減の64万1348台で3年ぶりのマイナス。国内市場向けおよび輸出向けの「エクストレイル/ローグ」やEV「アリア」が低迷した結果、北米向けの生産が同20.7%減と低迷するなど、輸出としても同12.7%減と3年ぶりに減少した。

 海外生産も厳しく、前年度比9.8%減の240万7369台と7年連続の前年割れだった。主要市場の北米は、「キックス」「ヴァーサ」が増えたメキシコは同7.8%増と好調だったものの、米国はローグが低迷した他、2024年8月に「タイタン」を生産終了したこともあり、同17.4%減と大きく落ち込んだ。中国も、市場のEVシフトやそれに伴う競争激化などで「シルフィ」や「ヴェヌーシア」が減少し、同17.7%減と4年連続のマイナス。英国もEV「リーフ」の生産終了や「キャシュカイ」の減少により同15.1%減と3年ぶりに減少した。

 日産の大きな課題となっているのが、米国事業だ。2024年度の米国販売は、台数自体は前年度比2.5%増と、一見すると堅調に見える。ただ、コロナ禍や半導体不足の改善以降、米国市場では自動車メーカー各社の車両供給が回復し、販売競争が激化。HEVをラインアップしないなど商品力で見劣りする日産は、工場稼働率を維持するためにインセンティブ(販売奨励金)を大幅に積み増して安売りせざるを得ない状況になった。その結果、利益が大きく目減りし、2024年度通期連結決算の営業利益は前年度比87.7%減まで落ち込んだ。

 このため日産は、2025年5月13日の決算発表にあわせて、2027年度までに世界の車両生産17拠点のうち、7工場を閉鎖/統合する新たな経営再建計画「Re:Nissan」を発表した。これにより生産能力を2024年度の約500万台から250万台(中国除く)まで大きく引き下げ、収益性を改善する考えだ。

 実際に、足元では一層厳しさが増している。2025年3月単月のグローバル生産は、前年同月比11.3%減の25万1261台と10カ月連続で前年実績を下回っている。このうち海外生産は同11.9%減の19万7723台と10カ月連続のマイナス。厳しいのが米国で、ローグや「パスファインダー」の販売が低迷し、同11.6%減と11カ月連続のマイナスだ。メキシコも同0.9%減と3カ月ぶりに減少した。また、依然として厳しいのが中国で、シルフィの販売減で同21.2%減と10カ月連続のマイナス。英国も同6.1%減と10カ月連続で減少している。

 国内も同様で、2025年3月の国内生産は前年同月比8.9%減の5万3538台と13カ月連続のマイナス。4月の国内販売を見ると、セレナが同19.8%減、「ノート」が同25.7%減、エクストレイルに至っては同70.3%減という状況で、主力モデルが軒並み低迷している。輸出も北米向けが同31.0%減と大きく落ち込み、グローバルでは同4.8%減と5カ月連続のマイナスだった。

マツダ

 マツダの2024年度のグローバル生産台数は、前年度比1.0%減の120万7069台と3年ぶりに減少した。メインの国内生産が伸び悩み、同6.3%減の74万8545台と3年ぶりのマイナス。海外生産が伸長したことで、世界生産に占める国内生産比率もこれまでの3分の2程度から62%まで低下した。「CX-90」が同41.1%増など「ラージ商品群」が伸長したものの、主力モデルの「CX-5」が同22.0%減と低迷したことが全体のボリュームを押し下げた。2024年度の国内販売では「CX-80」が1万512台の純増となったが、「CX-60」は同41.2%減と落ち込みが目立った。

 一方、海外生産は好調で、前年度比9.2%増の45万8524台と3年連続のプラス。8社の海外生産で最も高い伸びを示した。けん引役は、需要が堅調な北米だ。米国工場は2直化したことに加えて、生産する「CX-50」の販売好調により同57.8%増と大幅に増加。メキシコも「マツダ2」「マツダ3」の生産が増加し同9.1%増で、北米トータルでは同22.1%増と高い伸びを示した。

 ただ、中国はCX-5が増えたものの、マツダ3の減産や「マツダ6」「CX-4」の生産終了、市場のEVシフトの影響などにより前年度比21.1%減と大幅に減少。タイも2024年12月に合弁相手のフォードがライン工事を実施し、あわせてマツダも1カ月操業を停止したため、同2.4%減と前年割れとなった。

 2025年3月単月のグローバル生産台数は、前年同月比3.8%減の9万6600台と2カ月連続で減少した。国内生産が伸び悩み、同11.7%減の5万6529台と2カ月連続のマイナスだった。一部改良を実施したCX-60は同2.2倍と大幅に増加したが、主力のCX-5が同28.4%減の大幅減が響いた。

 海外生産は好調で、前年同月比10.1%増の4万71台と3カ月連続のプラス。中国はEV「EZ-6」の純増などがあったが、マツダ3の減産が大きく、同25.9%減となった。それ以外は好調で、タイはマツダ2の増産で同18.5%増となった他、メキシコもCX-3やマツダ2の増産で同15.5%増、米国も同30.3%増と引き続き好調で、北米トータルでは同20.4%増と大幅なプラスを確保した。

 マツダは、日系メーカーの中でも米国の追加関税の影響を大きく受けそうだ。2024年度の米国販売は前年度比15.9%増と好調で、米国事業はマツダをけん引する存在となっている。一方で、販売車両の多くを日本やメキシコからの輸入で賄っており、唯一の米国生産拠点であるアラバマ工場はトヨタとの共同出資で建設したためトヨタ車も生産しており、マツダ車の生産台数は限られる。米国向けの他カナダ向けも生産しており、2024年度の米国販売のうちアラバマ工場生産車は2割程度にとどまっており、関税対策が喫緊の課題となっている。このためマツダは対応策として、2025年5月からアラバマ工場でのカナダ向けの生産を一時停止し、米国向け車両の生産を開始した。

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