樹脂部品は、例外を除き金型で作製する以外に方法はない。特に、PCのマウスのように微妙な曲線形状を持つ部品は樹脂でしか作製できないため、金型を作るしかない。連載第9回で紹介したように、角材の切削や注型、3Dプリンタで作製する方法もあるが、以下の理由から、これらの方法で量産部品を作るのは現実的ではない。
以上の理由から、特に体裁部品にはこれらの方法は適さない。一方で、比較的材質にこだわらなくてもよい製品の内部部品であれば、実際にこれらの方法が用いられるケースも少なからずある。
よって、樹脂部品のある製品をODMする際には、金型費と金型の作製期間が必要になることをあらかじめ理解しておかなければならない。
板金部品は、(1)金型で作製する方法と、手作り試作部品と同様に(2)タレットパンチプレス/レーザー加工機+ベンディングマシンで作製する方法がある。いずれも同じ材質、ほぼ同じ形状で作製できる。よって、どちらの作製方法を選択するかは、前述した生産数量と金型費(図2)で判断するのがよい。
一般的に、大量に生産されるエアコンやドライヤーなどの家電製品の外装部品は樹脂でできており、職場のシュレッダーや測定器/装置などの生産数が少ない業務用製品の外装部品は板金でできている。その理由は、生産数が少ない業務用製品の部品を金型で作製すれば、その少ない総生産数で金型費を案分し、そのコストを部品コストに加算しなければならず、最終的に製品1台当たりの販売価格が高くなり過ぎてしまうからである。
金属部品に関する基本的な考え方は樹脂部品と同じだが、手作り試作部品の作り方で量産部品を作製する場合は多い。連載第9回で紹介した通り、手作り試作部品の作り方には、角材の切削や金属3Dプリンタによる方法がある。
以下に、手作り試作部品と量産部品の主な特徴を示す。
よって、金型を作るか否かは、前述したように生産数量と金型費を基に決めるのがよい。
連載第8回と第9回で、部品の作り方について詳しく解説した。これらの内容を理解していれば、ODMする前に考慮すべき点が明確になり、ODMメーカーとのやりとりもスムーズに進められるはずだ。 (次回へ続く)
オリジナル製品化/中国モノづくり支援
ロジカル・エンジニアリング 代表
小田淳(おだ あつし)
上智大学 機械工学科卒業。ソニーに29年間在籍し、モニターやプロジェクターの製品化設計を行う。最後は中国に駐在し、現地で部品と製品の製造を行う。「材料費が高くて売っても損する」「ユーザーに届いた製品が壊れていた」などのように、試作品はできたが販売できる製品ができないベンチャー企業が多くある。また、製品化はできたが、社内に設計・品質システムがなく、効率よく製品化できない企業もある。一方で、モノづくりの一流企業であっても、中国などの海外ではトラブルや不良品を多く発生させている現状がある。その原因は、中国人の国民性による仕事の仕方を理解せず、「あうんの呼吸」に頼った日本独特の仕事の仕方をそのまま中国に持ち込んでしまっているからである。日本の貿易輸出の85%を担う日本の製造業が世界のトップランナーであり続けるためには、これらのような現状を改善し世界で一目置かれる優れたエンジニアが必要であると考え、研修やコンサルティング、講演、執筆活動を行う。
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◆著書
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