社内に設計者がいないスタートアップや部品メーカーなどがオリジナル製品の製品化を目指す際、ODM(設計製造委託)を行うケースがみられる。だが、製造業の仕組みを理解していないと、ODMを活用した製品化はうまくいかない。連載「ODMを活用した製品化で失敗しないためには」では、ODMによる製品化のポイントを詳しく解説する。第8回のテーマは、前回に引き続き「試作セットの設計検証(試験や測定)項目の決め方」だ。
前回に引き続き、「試作セットの設計検証(試験や測定)項目の決め方」をテーマにお届けする。まずは、信頼性の検証項目について確認していこう。
信頼性とは、その製品が壊れにくいことである。一般的な検証項目を3つ挙げる。
製品を包装した状態での振動試験と落下試験があり、ほとんどの製品はこれらの試験を行う。販売店や工場などからユーザーの手元までの輸送中に、トラックなどの振動や積み下ろし時の落下で、製品が壊れないことを確認する。設計では、包装した状態で振動や落下が生じた際に、製品が壊れたり、傷が付いたりしないようにする必要がある。
高温環境下(例:夏場のクルマの車内など)で使用される製品の場合、その高温下で製品が故障しないことを確認する。電気部品や樹脂部品の温度が、高温下でもその耐熱温度以下になるような部品や材料を設計で選定する必要がある。
特に冬季において、帯電したユーザーが製品を触ったときに、ユーザーの身体の静電気によって製品が故障しないことを確認する。設計では、静電気の飛びやすい箇所をアースにつないだり、その箇所の近くの外装部品に隙間がないようにしたりする必要がある。
スタートアップの作る製品が特徴的なものであれば、上記のような一般的な検証項目以外の項目が必要になる場合がある。その際、スタートアップは必要となる検証項目を考え、それをODMメーカーに提示しなければならない。
前回同様、オーブントースターを例に、壊れる可能性のある項目を挙げてみる。
壊れやすい箇所とは、荷重のかかる箇所/動く箇所、電気の通る箇所、熱の加わる箇所などである。つまり、“使用中に何か変化のある箇所”と考えればよい。例えば、以下のような箇所が挙げられる。
以上のような変化のある箇所における“壊れ方”を図1のように想定する。
次に、上記の項目に対して、どのような試験をどのような方法で行うかと、その判定基準を決めなければならない。ただし、それらをスタートアップのみで考えるのは難しいため、ODMメーカーや製品化設計の専門家に相談するとよい。その際、スタートアップは、次に挙げる製品の前提条件を伝える必要がある。
保証期間は、製品の種類によってさまざまであるため、Webサイトから類似の製品を見つけて目星を付けよう。取扱説明書に記載されている場合が多い。使用頻度は、オーブントースターなら朝と夜の2回で、1回の使用における扉の開閉は4回などと決める。使用環境はオーブントースターなら室温である。使用環境については、温度/湿度/気圧や水中/水しぶきなどの条件を提示する。
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