なぜボルトは破断するのか? 金属疲労の話をしておこう冴えない機械の救いかた(6)(1/4 ページ)

本連載「冴えない機械の救いかた」では、メカ設計の失敗事例を題材に、CAE解析や計測技術を用いて、不具合の発生メカニズムとその対策を解説していく。第6回は、現場で発生することの多いボルトの疲労破断をテーマに、その基礎となる金属疲労について説明する。疲労限度や破断面の見方、き裂停留の考え方などを整理しながら、なぜボルトが疲労破断しやすいのかを考える。

» 2026年06月08日 08時00分 公開

 MONOistでボルトの話をするのは3回目です。今回は鉄鋼材料の金属疲労を取り上げます。設計初心者向けに内容を全面的に書き直しました。

 ここから3回ほどにわたり、ボルト破断について、

  1. ボルトを締め付けていなかった場合(緩んだ場合)
  2. ボルトを締め付けていた場合(ねじ/ボルトの文献による方法)
  3. ボルトを締め付けていた場合(有限要素法による方法)
  4. ボルト本数が1本の場合と2本の場合

の違いを、破断事例を交えながら説明していきます。残りのいくつかの事例については、いずれお話しします。

 ボルト破断のほとんどは金属疲労によるものです。そこで今回は、金属疲労について少し詳しく説明しておきましょう。応力集中による金属疲労についても、初心者向けに全面的にリライトします。

 金属疲労では、ボルトにまず小さなき裂が発生し、そのき裂が進展して破断に至ります。金属疲労の有無は、発生する応力振幅と材料の疲労強度を比較して判断します。今回は、そのき裂について少し詳しく説明します。

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あなたの落としたのは金のボルトですか、それとも疲労破断したボルトですか

 はい、正直に「金属疲労で破断した」と報告しましょう。でないと、またいつか同じことが起こります。

金のボルトと疲労破断したボルト 図1 金のボルトと疲労破断したボルト[クリックで拡大]

 では、どうしてボルトの疲労破断が多いのでしょうか。その理由を説明するために、本シリーズでは数回に分けてボルトの応力集中による金属疲労について取り上げます。

ボルトの疲労強度のあらすじ

 ボルトの疲労強度(ボルト1本当たりに許容される繰り返し荷重)がどのように変化するのか、先にお話ししておきます。M10サイズ、強度区分12.9のボルトを例に説明します。

 締め付け状態、ボルトの本数、被締結物の形状によって、ボルトが疲労破断しないように被締結物へ加えられる繰り返し荷重は変化します。ボルトの本数が変わるので、この荷重をボルト本数で割った繰り返し荷重(ここでは「許容繰り返し荷重」と呼びます)を比較してみましょう。

 疲労破断の判断方法は、次式で表したように、ボルトに発生する応力振幅σaが材料の疲労限度より小さければ疲労破断しないと判定します。

式1 式1
式2 式2

 以下に示した5つのケースの疲労破断しない繰り返し荷重を比較します。ボルトの数が違うので、繰り返し荷重はボルト1本当たりの値です。許容繰り返し荷重ですね。

(1)ボルト1本でボルトを締め付けない場合

(2)ボルト1本でボルトを締め付けた場合、文献による内力係数φを使用した場合
(荷重作用箇所が1箇所で、荷重作用線とボルト軸が一致する場合 L=0[m])

(3)ボルト1本でボルトを締め付けた場合、有限要素法で内力係数φを求めた場合
(荷重作用線とボルト軸が一致しない場合 L=L[m])

(4)ボルト2本でボルトを締め付けた場合、有限要素法で許容繰り返し荷重を求めた場合
(荷重作用線とボルト軸が一致しない場合、多くの機械はこれに相当する)

(5)ボルト16本でボルトを締め付けた場合、有限要素法で許容繰り返し荷重を求めた場合
(荷重作用線とボルト軸が一致しない場合、多くの機械はこれに相当する)

 荷重振幅は図2のように片振荷重とします。

荷重条件 図2 荷重条件[クリックで拡大]

 では、結論を先に述べます。(1)〜(5)での許容繰り返し荷重を比較しましょう。表1に示します。ねじ/ボルトの文献に従うと(2)の結果となります。

 まず(1)(2)を比較しましょう。ボルトを規定トルクで締め付けた場合、許容繰り返し荷重は6885[N]から2万5423[N]まで上昇しました。「お得」ですね。後述する内力係数φのおかげです。反対にボルトが緩むと、今まで大丈夫だったボルトがある日突然疲労破断します。ねじの緩みには気を付ける必要があります。

 (3)は有限要素法で求めた繰り返し荷重です。2万5423[N]から5万3679[N]に上昇しました。以前、「CAE設計演習問題」(参考文献[1])を作成しているときに気付きました。ねじの研究をされていたゲルハルト・H・ユンカー氏も気付いていて、当時は経験値を採用されていたそうです。なので計算間違いではないようです。

ボルト締結部の形態と許容される繰り返し荷重(ボルト1本当たり) 表1 ボルト締結部の形態と許容される繰り返し荷重(ボルト1本当たり)[クリックで拡大]

 かなり使える荷重が増えましたね。これからが本番です。

 (4)はボルトが2本の場合です。図示したa、b寸法で結果が変わります。典型例では1万1133[N]まで低下しました。これが(2)の結果より大きければ「ねじ/ボルトの文献に従っていたら大丈夫」ということになりますが、どうやらそうではないようです。

 a、b寸法によって結果が変わるので、悪い条件では4342[N]と(1)の結果より低くなりました。このときのa、b寸法はかなりイジワルな条件なので、製作図面を見たら「パッと見、これまずいよな」と気付くと思います。

 (4)の結果からいえることは、「ボルトが2本になっても、許容繰り返し荷重は2倍にはなってくれない」ということです。荷重の作用線とボルトの軸が離れるほど、この傾向は強くなります。

 では、ボルトを16本にした場合はどうでしょうか。許容される繰り返し荷重は当然16倍にはなりませんし、ボルト2本の場合の8倍にもなりません。理由は「サボっているボルト」があるためで、ボルトは1本ずつ破断していきます。

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