なぜボルトは破断するのか? 金属疲労の話をしておこう冴えない機械の救いかた(6)(2/4 ページ)

» 2026年06月08日 08時00分 公開

これから話す3回分のあらすじ

 以下に、これから話す3回分の連載の目次を記します。これまでの記事と重複する部分は初心者向けにリライトします。聞いたことのない専門用語も出てきますが、メカ設計初心者向けに説明していきます。

  • 第6回 金属疲労について ボルト破断事例とその対策
    • どうしてボルトの疲労破断が多いのだろう
    • 鉄鋼材料の疲労限度
    • 断面観察は必須、ディンプルとストライエーション
    • き裂停留 鉄鋼材料の場合
    • き裂停留 オーステナイト系ステンレス鋼やアルミニウム合金の場合
  • 第7回 応力集中係数αと切欠係数β
    • ねじ谷底の応力集中 応力集中係数α
    • 応力集中による疲労強度低下 切欠係数β
    • 「ここまで読んだらこのシリーズを読むのをやめて設計に戻ってもいい。ボルト3本でもつ設計をすれば問題解決」という強烈な論理の飛躍
  • 第8回 ボルトをちゃんと締め付けた場合とそうでない場合
    • ボルト1本構成の許容繰り返し荷重 トルク管理しなかった場合とボルトが緩んだ場合(事例1)
    • ボルト1本構成の許容繰り返し荷重 トルク管理して締結した場合と定期的にメンテナンスしている場合(事例2)
    • ねじの文献はボルト1本の話。ボルト2本構成のときの許容繰り返し荷重は2倍でいいのだろうか(事例3)

 ここでお腹いっぱいになりますね。いったんボルトの話は休止して、異なる失敗事例を数例お話ししましょう。

 その後、ボルトが2本以上の場合の破断事例とその対策も取り上げます。以下のような内容です。

  • CAE解析を使ったボルトの疲労破断の予測法(再掲)
  • 手計算の限界、ボルト2本構成でも形が変われば強度が変わる
  • ボルトの回転ゆるみ止め対策は安くて簡単に済む話である
  • ボルトが緩めば疲労破断する
  • 回転量の有無ではなく軸力を管理すべきなのでは(事例5)
  • 打抜き金型のメンテナンス時にボルト破断が見つかって、脇の下から冷や汗タラリ。ボルトは1本ずつ折れていく(再掲、事例6)
  • ボルトが16本だからといって許容荷重は16倍にならない(事例7)

どうしてボルトの疲労破断が多いのだろう

 図3にボルトで固定されたブラケットを示します。前シリーズのブラケットとは、説明を簡素にするために形状が少し違います。

壁に固定されたブラケット 図3 壁に固定されたブラケット[クリックで拡大]

 CAE解析ソフトが付属している3D CADのユーザーだと、図4のような応力解析で強度計算するでしょうか。相当応力の最大値を読み取って、これと降伏応力ないしは引張強さとの比(このことを安全率として表示するCAE解析ソフトもありますね)を計算して、強度計算完了としているかもしれません。

解析結果 図4 解析結果[クリックで拡大]

 ちょっとブラケットに作用している力を考えてみましょう。図5になるでしょうか。

ブラケットに作用する力 図5 ブラケットに作用する力[クリックで拡大]

 図4右図の黒丸(O点)周りのモーメントのつり合いを考えてみましょう。つり合い式は次式となります。

式3 式3

 ボルトに作用する力は以下となります。

式4 式4

 図から明らかにa<bですね。ということは、ボルトに作用する力B1は荷重Wよりはるかに大きいということです。では、荷重のかかる部品の断面を見てみましょう。図6に断面の比較を示します。

断面の比較 図6 断面の比較[クリックで拡大]

 応力は「荷重/断面積」でした。ボルトに作用する力B1は荷重Wよりはるかに大きく、さらにB1を支えるボルトの断面積ABoltはブラケットの断面積ABより小さいことから、ブラケットに発生する応力よりもボルトに発生する応力の方がはるかに大きいことが推測されます。

 そうすると、図4のようなCAE解析をするよりも(やらないよりましですが……)、ボルトの強度計算を実施すべきということになります。以上の理由から、ブラケットよりもボルトの方が疲労破断しやすいのです。

 ここで1つ断りを入れておかねばなりませんね。図5の力のつり合いは、ボルトが締まっていないときのものです。ボルトが規定トルクで締結されている場合は、少し異なる力のつり合い状態となります。

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.

特別協賛PR
スポンサーからのお知らせPR
Pickup ContentsPR
Special SitePR
あなたにおすすめの記事PR