住友ゴム工業と富士通は、タイヤ性能をAIで予測するAIサロゲートモデルを共同開発した。実証実験では、タイヤの変形挙動予測において解析時間を従来の約45分から約5分に短縮するとともに、約60万要素規模の解析を実現した。
住友ゴム工業(以下、住友ゴム)と富士通は2026年6月3日、住友ゴムが長期経営戦略で掲げる設計DX(デジタルトランスフォーメーション)の実現に向けて、タイヤ性能をAI(人工知能)で予測するAIサロゲートモデルを共同開発し、実証実験で成果を確認したと発表した。
製品や構造物の性能や安全性を評価するCAE解析では、製品の高性能化や複雑化に伴い解析時間が増加している。タイヤ設計で用いられるFEM(有限要素法)解析は、要素(メッシュ)数を増やすことで精度向上が期待できる一方、計算時間や開発コストも増大する。また、解析には専門知識が必要であり、技術者の確保も課題となっている。
こうした課題に対応するため、両社は過去に蓄積されたFEM解析結果を学習データとして活用し、FEMの基礎方程式の解を高速に予測するAIサロゲートモデルを開発した。
住友ゴムのタイヤ設計ノウハウや実設計データと、富士通のAI技術を活用し、GNN(グラフニューラルネットワーク)アルゴリズムをベースとしたAIサロゲートモデルを共同開発した。両社はこのモデルを用いて、タイヤの構造解析に関する実証実験を実施した。
実証実験では、タイヤの路面接地時における接地形状や接地圧分布など、変形挙動や接地特性の評価を対象とした。
その結果、従来のFEM解析では約45分を要していた解析を約5分で実行でき、解析時間を約90%削減。約60万メッシュ規模の解析を実現した。予測精度については、FEM解析と比較してタイヤと路面の接地形状を平均87.7%の精度で予測したという。
同技術を活用することで、従来は複数の設計プロセスを経て決定していたタイヤの構造や材料仕様を、より少ないプロセスで短時間に検討できるようになるという。これにより、設計開発における意思決定の迅速化やコスト最適化が図れる。
住友ゴム工業は今後、タイヤ構造解析への適用範囲を拡大するとともに、2027年4月の実運用開始を目指し、専門知識がなくても設計者が利用できる設計開発支援ツールの開発を進める。
また、同技術は富士通が開発するArmベースの次世代CPU「FUJITSU-MONAKA」での動作を前提に設計されている。両社は2026年12月までにFUJITSU-MONAKA検証機での実証を開始し、推論速度や精度、電力効率の最適化を進める計画だ。
住友ゴムは長期経営戦略「R.I.S.E. 2035」の下で設計DXを推進している。一方、富士通は自動車産業をはじめとする製造業向けに大規模FEM解析への展開を進めるとともに、FUJITSU-MONAKAとGNNを組み合わせたAI推論プラットフォームの開発や、AIプラットフォーム「Fujitsu Kozuchi」での提供を通じて、製造業の開発効率化や省電力化への貢献を目指すとしている。
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