社内に設計者がいないスタートアップや部品メーカーなどがオリジナル製品の製品化を目指す際、ODM(設計製造委託)を行うケースがみられる。だが、製造業の仕組みを理解していないと、ODMを活用した製品化はうまくいかない。連載「ODMを活用した製品化で失敗しないためには」では、ODMによる製品化のポイントを詳しく解説する。第7回のテーマは「試作セットの設計検証(試験や測定)項目の決め方」だ。
連載第6回で製品仕様書を作成するところまでを説明した。これでいよいよODMメーカーは設計を開始できるが、実はまだ検証項目を提示していない。
検証項目の提示は、どの程度の安全性(ユーザーに危害を加えないこと)と信頼性(壊れにくいこと)を持つ製品を設計してほしいかを、ODMメーカーに伝えるために行う。検証では製品の試験や測定を行い、安全性や信頼性を評価する。
これらは本来、製品仕様書に記載すべき内容であるが、スタートアップが検証項目を自社だけで考えるのは困難なため、ODMメーカーに相談する必要がある。よって、現実には製品仕様書をODMメーカーに提出し、製品の仕様を理解してもらってから、一緒に検証項目を決めていくことになる。
設計検証は、製品化日程において図1の赤字で示した時期に行う。
ODMメーカーは設計が完了すると、試作部品を部品メーカーに発注し、それらを組み立てて試作セットを作製する。その後、製品仕様書に沿って試作セットの機能が正常に動作するかどうかを確認し、問題がなければ検証項目にあるさまざまな試験や測定を行う。
図1を見てみると、試作セットを作製する前に設計審査(審査)があることが分かる。厳密にいえば、設計審査は試作部品を発注する前に行われる。これは、設計データのみで行う設計検証のようなもので、設計データだけで安全性や信頼性をできる範囲で確認する。現在は、CADを用いたシミュレーションが進歩しているため、信頼性の多くはCADデータだけでも確認可能だ。
設計検証では、試作セットが設計品質を満足しているかどうかを、試験や測定によって確認する。設計品質の詳細に関しては、連載「ベンチャーが越えられない製品化の5つのハードル」の第3回、第4回、第5回を参照してほしい。
設計品質には、以下の5つの項目がある。
なお、4.サービス性に関しては、スタートアップの場合、製品の修理もODMメーカーに依頼することが多いため、ODMメーカーに一任してもよいといえる。よって、ここでの説明は割愛する。
5.コスト管理についても、スタートアップが契約書によってODMメーカーから量産する製品の購入価格を決める場合が多いため、スタートアップが管理する必要はないと判断し、ここでの説明を省く。
それ以外の設計品質を確認する検証項目(上記の1〜3.の項目)は、依頼する製品に類似した製品を過去に設計した経験のあるODMメーカーであればおおよそ知っているはずだが、選定したODMメーカーによってはそうでない場合もある。
以降で、電気製品の一般的な安全性と信頼性、製造性の検証項目の一部と、新たに検証項目を考え出す方法を説明する。
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