自律航行型無人船でホンダ社員が起業、海洋観測を安価で手軽に船も「CASE」(3/3 ページ)

» 2025年03月27日 09時45分 公開
[齊藤由希MONOist]
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 試作品は船体上面のソーラーパネルで発電し、動力用のモーターを駆動する方式だ。太陽光発電で数カ月間稼働し続けることを想定している。ニーズや用途に応じて風力発電を追加したり、燃料を使う発電機を搭載したりする可能性もある。

 ウミエルのASVの船体は一定の重量物を搭載できる。海洋観測の目的に合わせてASVにさまざまなセンサーを搭載し、さまざまな観測ニーズに応える。センサーメーカーとも協力する。

 地震対策の観測に向けて相模湾でのテストにも取り組んでおり、東京大学 生産技術研究所 准教授の横田裕輔氏と共同研究を進めている。また、北海道大学 教授の宮下和士氏とも共同研究契約を締結し、海洋生態系の可視化にも取り組む。ASVによる大規模スマートセンサーネットワークシステムの開発プロジェクトに参加し、持続可能な海洋資源管理への貢献を目指す。

ASVの試作品[クリックで拡大]
水中翼で推進する[クリックで拡大]

ASVの市場見通し

 ASVの市場規模は2023年の439億米ドルから2030年には1189億米ドルに拡大すると見込まれている。年平均成長率は15.3%だ。

 ウミエルはセンサーを搭載したASVの販売やメンテナンス、交換パーツや運用監視ツールも提供することで収益を得る。また、観測の受託や観測データの販売もビジネスの柱とする。2030年には海外展開を開始し、2035年にASV1900台の販売を目指す。民間企業向けに導入実績を積みながら気象庁や海上保安庁向けの受注を獲得していきたい考えだ。

応募が絶えないイグニッションプログラム

 イグニッションプログラム発の4例目が発表になったことを受けて、ホンダ IGNITIONプログラム統括の中原大輔氏は「千三つ(せんみつ、1000個のうち新ビジネスとして当たるのは3個の意)と考えれば、1000件の応募から4例目が出たのは順調だ」と述べた。

 社内の公募制度は、スタート時に最も応募が多く、年々応募が減少して制度が終了することも珍しくないが、中原氏によれば2017年スタートにもかかわらずイグニッションプログラムへの応募数は維持されている。審査を通過できなかった人が再チャレンジで応募する例もあるという。

 応募が絶えない理由の1つは、落選者のフォローアップが手厚いことだと中原氏は分析している。イグニッションプログラムとは別に展開している勉強会「イグニッションスタジオ」によって、フォローアップを兼ねて事業開発について学ぶ場を提供している。イグニッションプログラムに新たに興味を持つ人が増えるきっかけになっている他、イグニッションプログラムとは別の、ホンダとしての新事業に携わる人も勉強できる場として運営している。

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