ホンダは電動アシスト付き自転車をコネクテッド化するサービス「SmaChari(スマチャリ)」を発表した。NFCによってスマートフォンが自転車の鍵の代わりになる他、専用アプリを通じてアシストの出力を変更したり、個人に合わせてアシストを最適化したりできる。
ホンダは2023年3月29日、電動アシスト付き自転車をコネクテッド化するサービス「SmaChari(スマチャリ)」を発表した。NFCによってスマートフォンが自転車の鍵の代わりになる他、専用アプリを通じてアシストの出力を変更したり、個人に合わせてアシストを最適化したりできる。また、走行データの管理やバッテリー残量の確認、故障検知、位置情報の共有などにも対応した。
スマチャリ搭載モデル第1号は、ワイ・インターナショナルを通じて2023年9月に発売される。スポーツバイクタイプで、税込みの予定価格は22万円。2023年5月から受注を開始する。
スマチャリはホンダの従業員を対象にした新事業創出プログラム「イグニッション」でスタートした。同プログラムからは、靴に装着する目が不自由な人向けのナビゲーション用デバイス「あしらせ」や電動三輪マイクロモビリティ「ストリーモ」が生まれた。
自転車向けのスマートフォンアプリは他社でも例があるが、スマチャリではクラウドと連携したアプリを提供する点が特徴だ。スマートフォンアプリと自転車はBluetoothで接続する。四輪車から集まっているデータを活用して急ブレーキが多い地点などで注意喚起する他、家族や友人にアプリ経由で鍵を貸す機能や、友人との待ち合わせや出掛けた子どもの見守りなどに使える位置情報共有機能を提供する。
自転車の安心安全にもこだわった。システムの出力の制御によって、ペダルに足を置いたときなどの予期せぬ急発進を抑制するとともに、センシングデータから乗り手の意思や走行状況を判断してモーター出力をきめ細かく調整する。電動アシスト機能の故障やエラーを検知してユーザーに通知したり、システム上で車両データを管理して販売店からユーザーにデータを基にした定期点検などを提案したり、メンテナンスも支援する。
ベースとなる自転車「RAIL ACTIVE」は日本のスポーツバイクブランド「KhodaaBloom」が企画、開発したクロスバイクだ。通勤通学からサイクリング、ロングライドまで対応する機能性を持たせている。ロードバイク並みの超軽量アルミフレームを採用し、電動アシストシステムを搭載しながら車体重量を15kgに抑えた。
もともとRAIL ACTIVEに電動アシストの選択肢はなかったが、スマチャリを利用して電動アシストモデルが製品化された。電動アシストシステムの取り付け作業は自転車の販売店で行う。電動アシストシステムはホンダが設計、開発したものではなく、スマチャリがカバーするのは電動アシストシステムの制御の領域のみだ。なお、電動アシスト付きの状態で型式認証を取得するため、購入済みのRAIL ACTIVEに後から電動アシストシステムを追加することはできない。
スマチャリの開発がスタートした背景の1つには、電動アシスト付き自転車の選択肢の少なさがあるという。また、自転車販売の現場では電動アシスト有り無し両方をラインアップに持つのは難しいという現状もある。
好みの電動アシスト付き自転車が入手できない個人ユーザーが、既製の自転車に電動アシストシステムを後付けするのも困難だ。日本で入手できる電動アシストシステムは正規販売品ではないため品質保証を受けられず、自転車として動くようにするには専門的な知識も必要だ。また、海外製の電動アシストシステムは出力の制限がないため、日本の公道で使うと法規違反になる。
スマチャリは、さまざまなタイプの自転車を電動化/コネクテッド化することを目指しており、自転車のタイプや自転車メーカーが調達した電動アシストシステムに合わせて法規の範囲内でシステム出力を算出し、適合させる出力制御技術を採用している。これにより、既に製品化された自転車に電動アシストシステムを追加する形で電動化でき、既存のスポーツタイプの電動アシスト付き自転車と比べると、電動アシスト付きのRAIL ACTIVEは価格を3割減に抑える。
電動アシスト付き自転車の選択肢を増やし、運転中の安全やメンテナンスに関する機能を提供するのは、自転車で通学する高校生の困りごとを踏まえている。通学に自転車を使用する高校生は約半数で、180万人に上る。通学経路に急な坂道がある高校は2316校で、全体の45%を占める。そのため、電動アシスト付き自転車が欲しいという声は多い。また、自転車通学中の事故の確率は全年代の平均の5倍と高いなど交通安全上の課題もある。
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