帝人と富士通は、欧州で使用済み自転車フレームの90%以上がリサイクルされていないことを踏まえ、ドイツ企業とともに、自転車フレームのリサイクルを後押しするプロジェクトを始動した。
帝人と富士通は2023年1月19日、オンラインで会見を開き、ドイツ企業である炭素繊維強化プラスチックを材料に使用した自転車フレームの製造と販売を行うV Framesと、同じくドイツの自転車メーカーであるE Bike Advanced Technologies(以下、Advanced Bikes)と共同で、自転車のフレームに利用されるリサイクル炭素繊維を対象に「資源循環における環境価値化実証プロジェクト」を開始したことを発表した。
今回のプロジェクトでは、第1ステップとして、帝人と富士通が2022年7月から構築を進めている「リサイクル素材の環境価値化プラットフォーム」を活用し、2023年1〜3月にかけて、V Frames製自転車フレームに使用されるリサイクル炭素繊維や環境負荷に関する証跡データの収集と管理を行うとともに、そのプロセスの実現性を評価し、可視化したデータの価値を検証する。
加えて、上記の証跡データを環境への関心が高い自転車市場で開示するとともに、トレーサビリティーの実現やカーボンマネジメントでの活用で価値の創出を目指す。実証プロジェクト後、帝人と富士通は、資源循環における環境価値化プラットフォームの実装と導入を進め、2023年度に事業化する予定だ。
各社の役割に関して、帝人は各工程における環境評価の支援とエコシステム構築に向けたステークホルダーとの連携を担当する。富士通は同社のブロックチェーン利活用サービス「Fujitsu Track and Trust」によりプラットフォームの実装とトレースデータ可視化ツールの開発を担う。V FramesとAdvanced Bikesは、自転車やフレームの製造工程などで生じる環境負荷情報をプラットフォームに入力し、データの収集プロセスやプラットフォーム上で可視化されたデータをレビューする。
リサイクル素材の環境価値化プラットフォームを利用して、V Framesが展開する、炭素繊維強化プラスチックを用いた自転車フレームのリサイクルから販売に至るまでの全工程における情報(所在、状態、環境負荷など)を見える化する他、自転車フレームの状況をデジタル空間で仮想的に表現するデジタルツインの試みも進める。
プラットフォームに実装したブロックチェーンを使用し、過去におけるリサイクルの流れも調べられるようにするだけでなく、プラットフォームで得られたデータに基づいたトレースデータを自転車ユーザーに対して開示し、ステークホルダーがカーボンマネジメントなどに使えるようにもする。プラットフォームに蓄積されたデータは、自転車フレームの資源循環を実現していることを示すデータであることから、将来的にはESG投資の評価やクレジットとしても展開する。
帝人 新規事業マーケティング部 部長の松本昇久氏は、「本プロジェクトでは、炭素繊維強化プラスチックを材料に利用した自転車フレームを対象に、使用された材料の由来やGHG(温室効果ガス)排出量の見える化を行い、透明性評価の基本的な仕組みを作る。その後、プロジェクトで構築したプラットフォームを、自転車ビジネスのブランディング向上に活用するだけでなく、繊維強化プラスチック(FRP)を使用する航空産業やEV(電気自動車)、風力発電ブレードなどの業界に展開する」と述べた。
欧州の自転車産業が製造する自転車の90%以上は、アジアで生産されたフレームを採用しており、アジアから欧州へのフレームの長期輸送でCO2が生じている他、使用済みフレームの90%以上がアジアで埋め立て処分されているため、循環利用が進んでいない。そこで、V Framesは、ドイツ国内での資源活用や製品寿命を迎えたV Frames製自転車フレームを再利用したフレームの製造に取り組み、GHG排出量削減に貢献している。
そして、帝人と富士通は、V FramesのGHG排出量削減の成果を可視化することで、環境に対する関心が高い自転車市場をはじめ、炭素繊維を扱う業界への意識付けを行う試みとして、V FramesならびにAdvanced Bikesとともに、自転車フレームに用いられるリサイクル炭素繊維の資源循環における環境価値化実証プロジェクトを開始した。
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