パナソニックHDは、これまでに開発してきた植物由来のセルロースファイバーを高濃度に樹脂に混ぜ込む技術を、海洋生分解性の植物由来樹脂などへ展開し、海洋環境で完全生分解性を有する成形材料を開発した。
パナソニック ホールディングス(以下、パナソニックHD)は2025年1月8日、これまでに開発してきた植物由来のセルロースファイバーを高濃度に樹脂に混ぜ込む技術を、海洋生分解性の植物由来樹脂などへ展開し、海洋環境で完全生分解性を有する成形材料を開発したと発表した。海洋生分解性樹脂にセルロースファイバーを高濃度添加することで、優れた機械特性と海洋生分解性を両立する成形材料の開発に成功している。
パナソニックHD MI本部は、2015年に石油由来の樹脂量を減らす研究開発活動を開始し、2019年に天然由来成分であるセルロースファイバーを55%の濃度で、2021年に70%の濃度(バイオマス度70%)で樹脂に混ぜ込む複合加工技術を開発した。2022年3月には植物由来の樹脂を使用したバイオマス度90%以上の成形材料を開発した。
2022年12月には、複合化技術を植物由来樹脂(ポリ乳酸)などへ展開した完全生分解性の成形材料を開発。土壌では完全生分解性を発揮する成形材料でも、自然界の中で微生物密度が低い海洋では分解されづらいことを踏まえて、パナソニックHD MI本部は、自然界流出時の環境汚染リスクの低減を目指し、海洋での生分解性を持つ成形材料開発の取り組みを進めた。
その結果、混練技術、成形技術を改良し、セルロースファイバーのつなぎ部分を海洋生分解性の樹脂に置き換えることで、海洋での完全生分解性を有し、耐久性用途に使用されるポリプロピレンと同等の強度を持つ、バイオマス度100%のセルロースファイバー成形材料の開発に成功した。
この材料は、同社が展開している従来品の「kinari(全体のうち55%がセルロースファイバー)」と同様に、着色自由性が高い白色の樹脂ペレット化に成功している他、素材そのものを褐色化させることや木質感の付与など、高いデザイン性も実現。加えて、日本バイオプラスチック協会が認証する「海洋生分解性バイオマスプラ」マークも取得している。
パナソニックHD MI本部は、2027年に海洋生分解性ペレットの販売を開始する見込みだ。今後は、海洋生分解性セルロースファイバー成形材料の特徴と優位性を生かし、家電の筐体や車載機構部材、高強度とデザイン性を持つ大物家電外装、美容家電、服飾衣料品、日用品、飲料/食品容器などへの展開を進めていく。
昨今の海洋プラスチック問題や石油資源の枯渇/地球温暖化といった環境問題から、天然資源の効率的な利用や、海洋汚染の防止および大幅な削減が国連の開発目標として定められており、樹脂量の削減が世界的に求められている。
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