パナソニック サイクルテックとパナソニック システムネットワークス開発研究所はITS(高度道路交通システム)を活用した自転車と自動車の車車間通信の実証実験を行う。京セラやトヨタ自動車、豊田通商も協力する。
パナソニック サイクルテックとパナソニック システムネットワークス開発研究所は2023年3月1日、ITS(高度道路交通システム)を活用した自転車と自動車の車車間通信の実証実験を行うと発表した。京セラやトヨタ自動車、豊田通商も協力する。2025年以降にITS対応の自転車を発売するなど社会実装を目指し、交差点での自転車と自動車の交通事故回避につなげる。
ITS向けの専用周波数帯である760MHz帯を使用し、自転車と自動車が直接通信する車車間通信によってお互いが接近していることを知らせる。また、クルマが止まると自転車に向けて「お先にどうぞ」とメッセージを送り、譲ってくれたことへのお礼を自転車から車両に送信できるようにし、譲り合いに対するモチベーションを醸成する。
実証実験は、2023年3月1〜3日に京セラの横浜中山事業所(横浜市)内にあるテストコースで実施する。京セラは自転車搭載用のITS無線実験機を、トヨタ自動車は車車間通信対応の車両を提供する。パナソニック サイクルテックはITS対応自転車の機能検証を行い、パナソニック システムネットワークス開発研究所がシステムの要件や仕様を策定する。実証実験の運営は豊田通商が行う。
今回の実証実験は自転車と自動車の車車間通信のみが対象だが、「スマートポール」(路側機)などのインフラと自転車の通信なども今後検証する。
実証実験では、パナソニック サイクルテックが市販する自転車に、ITS用のアンテナや位置情報を検出するためのGNSSアンテナを取り付けた。また、車両の接近を画面表示や音声で知らせるデバイスとして、スマートフォンも使用する。
車車間通信で受信した車両の位置情報から接近を判断する自転車側の処理は、スマートフォンで行う。位置情報から車両との距離を算出し、一定の距離に接近するとアラートを出すというシンプルな処理のため、スマートフォン側の負荷は小さい。
これらはあくまで実験用のシステム構成だ。スマートフォンが常に見える位置にあると自転車の運転の妨げになりかねないため、ITS対応自転車を製品化する際には車両の接近を知らせる専用デバイスを自転車に取り付けることになりそうだ。お礼のメッセージを自転車から自動車に送るための操作も、スマートフォンの画面を触るのではなく、自転車のベルを親指で鳴らすような簡単な動作にする。車両との距離を計算する機能も、スマートフォンを使わず自転車に搭載することも検討する。
ITSやGNSSのアンテナの取り付け方法はITS対応自転車の製品化に向けた課題だ。高さのあるアンテナを自転車に取り付けることは難しい。また、自転車を運転する人や後ろに乗せる子どもの位置も踏まえて最適な位置にアンテナを取り付ける必要がある。自転車のフレームの材質も考慮しなければならない。
こうしたアンテナ類や処理ユニット、車両の接近を知らせるデバイスは、電動アシスト付き自転車のバッテリーを電源として使用する。製品化に向けて、消費電力の低減や小型化、コスト低減なども課題となる。電動アシスト付自転車本体の価格に対して、ITS対応で上乗せされる具体的な金額についてはまだ検討中だとしている。
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