KIM法では、負荷推定を行う主な身体部位を以下の3つとし、それぞれに対してまず個別に負荷評価を行います。
項目A:背中/腰
項目B:肩/上腕
項目C:膝/足
評価シートを見ていただければ分かる通り、イラストで分かりやすく描かれている姿勢サンプルを参考に、その姿勢の状態のデューティ比を勘案して評点を加算していきます。姿勢が無理したものであればあるほど、作業時間に対してその姿勢でいる時間が長ければ長いほど、評点は大きな数になります。
項目A/B/Cそれぞれに対して評点を計算します。
また、追加して考慮すべき負荷条件(例:運動範囲に制限あり、振動あり他)が環境中に認められる場合には、項目A/B/Cそれぞれの評点に規定の点数を加算します。最後に、1日当たりの作業持続時間を掛け算し、そのA/B/Cの積のうち最も数が大きいものをリスクスコアとして採用します。
仮に、助力装置を使用する特定の作業に対してKIM法のアセスメントを実施し、その結果が下図評点記入例のようになったとします。
この結果では、項目A/Cが50点を超えており、その作業の負荷強度はかなり高い状態とされる状態にあると言えます。評価シートによると、50点以上の評点に対しては「作業環境の再設計やその他の予防対策を積極検討すべき」としており、実際多くの場合においては評点低減のための改善活動が行われます。
もし改善努力によって項目Aの評点82点を許容範囲までにできた場合でも、項目Cが60点のままであれば依然負荷は残存しているとされ、項目Cに対する改善が求められます。
ちなみに、評点の20〜49点は、グリーンゾーンにはあるもののわずかながら負荷強度が高い状態とされており、「適応が難しい作業者のために作業環境の再設計やその他の予防対策が有効」と注意が付記される位置付けになります。
また、低負荷環境として「過負荷は認められない/疾病リスクが低い」と客観評価される状態であるには、この評価シートにおいては評点が19点を下回ることが必要となります。
先の議論のような、インクルーシブな作業環境の構築を目指すというところにおいては、このリスクアセスメント評点が19点以下となるような理想的な作業状態を作ることが1つの答えになるかもしれません。
次回は、体格の異なる2人の当社社員による、助力装置を使った作業デモを通して、作業姿勢や体格差が負荷に与える影響を見ていきます。
シュマルツ株式会社 ビジネスディベロップメント
小川尚希(おがわ なおき)
工学修士(感性工学)。信州大学大学院にて介護用装着型アシスト装置や高分子人工筋肉をテーマにメカトロ系・人間工学系領域を専攻。これまでオカムラ(旧岡村製作所)、ルネサスエレクトロニクス他経て、2024年から現職。社のスローガン「重力負荷から人々を解放する」に共鳴しながら、FA/省力用機器の国内マーケティング活動やPSF活動を行っている。
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