パナソニックのシステムバスは真空圧着で加飾を効率化、廃フィルムの再生化も工場ニュース(1/3 ページ)

パナソニック ハウジングソリューションズは、茨城県水戸市の水戸工場で、「BEVAS」ブランドのシステムバスで初採用した新工法「真空圧着方式」を披露した。

» 2023年05月31日 10時30分 公開
[遠藤和宏MONOist]

 パナソニック ハウジングソリューションズは2023年5月29日、茨城県水戸市の水戸工場で見学会を開き、「BEVAS(ビバス)」ブランドのシステムバスを紹介し、採用している新工法「真空圧着方式」と廃フィルムのリサイクル工程を披露した。

補修作業を削減する真空圧着方式

パナソニック住宅設備 水戸工場 工場長の若林光博氏

 真空圧着方式は3フッ素/有機ガラス系の素材を配合した特殊シート「3Dプロテクトクリーンフロア」を床あるいは浴槽の側面部材(エプロン)に蒸着する工法だ。同工法の利用手順は、まず、成形機の成形治具(下型)に浴槽あるいはエプロンの基材をセットし、成形治具を下げ基材に3Dプロテクトクリーンフロアをセットする。次に、上型をセットし、上下の型で密閉された空間を真空とし、成形機のヒーターでフィルムを加熱して、軟化する。続いて、成形治具を上昇し、フィルムを密着する。その後、密閉空間の上部を圧空状態とし、3Dプロテクトクリーンフロアを基材に密着して蒸着し、手作業で余分なシート部分をカッティングし、成形品を取り出して完成となる。

 パナソニック住宅設備 水戸工場 工場長の若林光博氏は「これまで当社では床材やエプロンを加飾する際には、成形機で基材の成形を行うと同時に専用のシートをプレスしていた。しかし、この方法だとシートに部分的に剥離が生じ人手で補修する必要があった。一方、真空圧着方式の開発に当たって、専用設備の導入当初は、3Dプロテクトクリーンを蒸着した基材の表面にシワや気泡などが生じ、良品を取るのに非常に苦労したが成形条件(チャンバー内の温度や真空度)をコントロールすることで不具合を解消した」と課題とその解決法について語った。

成形治具に上型をセット[クリックで拡大]
フィルムを蒸着した基材の余分なシート部分を手作業でカッティング[クリックで拡大]

 加えて、真空圧着方式の開発に当たり、評価試験で、3Dプロテクトクリーンを蒸着した完成品に対して、実験装置を使って風呂イスによる4万3200回の擦り付けを行い、15年相当の擦り付けに耐えられる耐摩耗性を有していることを確認した。

 なお、BEVASの生産台数は月産300台で、ニーズが増え出荷台数が増加した場合は、人手で行っている余分なシート部分のカッティングの自動化も検討するという。

 水戸工場で行っている廃フィルムの再生化では、搬入されたシートモールディングコンパウンド(SMC)の梱包で使用され成形工程で排出されるポリプロピレン(PP)フィルムを再生材料化して再利用(マテリアルリサイクル)している。再生材料化の手順は、粉砕機にPPフィルムを投入し粉砕した後、スチレン脱臭機に入れて脱臭する。次に、専用のスペースで貯蔵して、4種混合フィーダーで混合した後、押し出し成型機で成形する。成形品を切断してプラスチックペレットを作り、バスカウンターの受け具などの素材として活用している。

 若林氏は「このように廃フィルムの再生化を行うことで、PPフィルムをそのまま焼却する場合と比べ、CO2排出量を77%削減した」と効果を説明した。

成形品を切断してプラスチックペレットを作成[クリックで拡大]
再生ペレットを素材にして作られたバスカウンターの受け具[クリックで拡大]
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