群馬大学は、海中で分解の遅い生分解性プラスチックの1種となるPBSAの分解を速める細菌を沿岸海水から発見した。他のポリエステルや非晶性PETも分解する能力があり、海洋での生分解性プラスチックの活用を促進させる可能性が示唆された。
群馬大学は2025年1月7日、海中で分解の遅い生分解性プラスチックの1種となるポリ(ブチレンスクシネート−co−アジペート、PBSA)の分解を速める細菌(Halopseudomonas sp. MFKK-1株)を沿岸海水から発見したと発表した。他のポリエステルや非晶性PETも分解する能力があり、海洋での生分解性プラスチックの活用を促進させる可能性が示唆された。
今回の研究では、環境条件によって分解速度にばらつきがあり、実際に海洋での使用に課題のあるPBSAに着目。沿岸の海水から、PBSAを分解可能なMFKK-1株を単離し、詳細に分析した。
その結果、MFKK-1株は海洋にすむHalopseudomonas属細菌であり、塩分濃度0.0〜0.8Mに適応し、かつPBSAを分解できることが分かった。MFKK-1株は分解生成物の1,4−ブタンジオールやアジピン酸を栄養源にできるため、海洋環境で分解産物をエネルギーとして用いている可能性がある。
MFKK-1株とその酵素は、ポリ(ε−カプロラクトン、PCL)やポリ(ブチレンアジペート−co−テレフタレート、PBAT)などの脂肪族、脂肪−芳香族ポリエステルにも分解活性を有す。よって、さまざまなプラスチックに対応できると考えられる。
また、MFKK-1株に由来する組み換え酵素(APHHsp)は、セリン、アスパラギン酸、ヒスチジンの触媒三残基を有するプラスチック分解酵素で、海洋塩分濃度に近い0.5M NaCl環境下でPBSA、PCL、PBATを分解できる。この酵素は、非晶性PETにも分解活性を持つことが判明した。分子ドッキング解析の結果、PBSAやPBATのモノマーとの結合方法が分解効率に影響しており、特にブタンジオール−アジピン酸ユニットを含むポリマーにおいて分解速度が高くなる理由が推測された。
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