日本ミシュランタイヤが群馬県に本社を移転、多様な働き方と通勤方法に対応製造マネジメントニュース

群馬県太田市内にあるR&Dセンター「太田サイト」に本社を移転し、2023年8月1日に登記を完了したと発表した。

» 2023年08月04日 10時30分 公開
[遠藤和宏MONOist]

 日本ミシュランタイヤは2023年8月3日、群馬県内とオンラインで記者会見を開き、群馬県太田市内にあるR&Dセンター「太田サイト」に本社を移転し、同月1日に登記を完了したと発表した。なお、旧本社である東京都新宿区のオフィスは縮小し、太田サイトの新本社に機能統合するが、これまでに展開してきた新宿区と名古屋市のオフィスの利用も継続するという。

シャトルバスや特急電車の利用時間は勤務時間に換算可能

 太田サイトは日本ミシュランタイヤの研究/開発で使用されていた施設で、今回の本社移転により、マーケティング部門と研究開発部門の連携を強化し、市場ニーズを踏まえたタイヤ製品の創出を推進する。

 本社移転後の働き方に関しては、「自立した自由な働き方で従業員満足度を向上」をテーマに掲げ、オフィスへの通勤日数は対象社員とそのマネジャーとの協議で決定し、東京駅と最寄り駅からのシャトルバス通勤、特急電車や自家用車を利用した通勤も認めるという。

本社移転後の働き方[クリックで拡大] 出所:日本ミシュランタイヤ

 さらに、シャトルバスや特急電車「りょうもう」の利用時間は勤務時間に換算可能とし、社宅の提供、法人契約したホテルによる宿泊のサポートも行う。加えて、東京都新宿区のオフィスに勤務する社員のうち、新本社に勤務場所を移す社員は、通勤可能なエリアに転居、あるいは在宅を中心とする勤務体制に切り替える予定だという。

日本ミシュランタイヤ 代表取締役社長の須藤元氏

 日本ミシュランタイヤ 代表取締役社長の須藤元氏は「もともと太田サイトには250人の社員が所属しており、新宿区のオフィスには150人が在籍していた。今回の本社移転により、新宿区のオフィスに所属していた社員のうち100人が新本社で勤務することが決定している。現時点でこの100人のうち20人は新本社に通勤可能なエリアに引っ越しが完了している」と話す。

 また、太田サイトには、環境の観点から既存の建物をそのまま生かし、社員の創造と革新の場となるコラボレーションスペースを新設する。このコラボレーションスペースのデザイン、設計、建設は、群馬県太田市の石川建設が率いるオール群馬企業から成るプロジェクトチーム「群馬WOOW」が手掛ける。

 コラボレーションスペースの構造躯体となるコンテナは全て群馬県内で製作することで、運搬時のCO2排出量を抑える。建材は再利用しやすいものを採用する。例えば、素地のままでのせっこうボードの使用、あるいは、せっこうボードの代わりに断熱材をシートで覆い、上から木版をすのこ上に固定する方法を採用することで建材を再資源化しやすくする予定だ。新たなコラボレーションスペースのテーマは「集う・アイデアが生まれる」で、着工は2023年11月で、完成は2024年11月を予定している。

新たなコラボレーションスペースのイメージ[クリックで拡大] 出所:日本ミシュランタイヤ

群馬県で実施している取り組みについて

 須藤氏は会見で、同社が群馬県内で開始している複数の事業を紹介した。例えば、群馬県、群馬大学、県内企業との連携により、群馬の地から物流業界の2024年問題を解決すべく立ち上げた「持続可能な運輸業界の実現に向けたぐんまの運輸デジタルイノベーション」プロジェクトがある。群馬大学とはインターンシップの受け入れや出張授業を通じた人材交流も行っている。加えて、同社が設立メンバーの1社である群馬積層造形プラットフォーム(GAM)では、県内の製造業とともにデジタルモノづくりに有意性ある製品作りを始めている。さらに、群馬県や太田市と共同でボランティア活動や人材育成事業を行う活動も開始している。

 持続可能な運輸業界の実現に向けたぐんまの運輸デジタルイノベーションプロジェクトは、運輸事業の生産性向上、環境負荷の低減、自動車稼働停止の最小化を目指している計画で、美松運送、日本ミシュランタイヤ、ドコマップジャパン、群馬大学、群馬県が参画している。美松運送が運送するトラックを対象に、ミシュランタイヤはタイヤのトレッドで生じる摩耗の管理やRFIDによる個体管理、適切なタイヤの空気圧管理、タイヤ交換、メンテナンス時期の判断を行う他、燃費とタイヤブランドや摩耗の関連性の分析も行っている。

持続可能な運輸業界の実現に向けたぐんまの運輸デジタルイノベーションプロジェクトのイメージ[クリックで拡大] 出所:日本ミシュランタイヤ

 ドコマップジャパンは、GPS端末やドライブレコーダー端末を導入するだけで車両の位置が一目で分かる車両位置情報システム「DoCoMAP」により車両の運行時に生じるCO2を可視化し、荷主がサプライチェーン全体の温室効果ガス(GHG)排出量を報告する国際基準「Scope3」のレポート作成を支援している。群馬大学はトラック待機時間削減方法の発見や燃費に良い条件の特定などを行っている。群馬県は運輸業界の魅力発見や物流業界を担う人材の育成を実施している。

 インターンシップや出張授業では、日本ミシュランタイヤは、海外からのインターンシップの受け入れや地域の子供たちへの学習支援、タイヤの安全教育も行っている。積層造形について、同社は2000年代初頭からタイヤ金型製造に樹脂積層造形の適用を開始し、現在はタイヤ金型部品を金属積層造形で量産化している。

群馬県内で展開しているインターンシップや出張授業[クリックで拡大] 出所:日本ミシュランタイヤ

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