Patentixは、イオン注入により、r-GeO2に対してn型導電性を付与することに成功した。r-GeO2は、p型、n型の両方の導電制御を可能とする次世代パワー半導体材料だ。
Patentixは2025年7月23日、ルチル型二酸化ゲルマニウム(r-GeO2)に対し、イオン注入によってn型導電性を付与することに成功したと発表した。r-GeO2はバンドギャップが4.68eVと広く、p型、n型の両方の導電制御を可能とする次世代パワー半導体材料だ。
同社はこれまでに、成膜中にアンチモン(Sb)を添加することで電子密度約1020cm−3のr-GeO2のn型制御に成功している。この技術を応用してショットキーバリアダイオードを試作し、ダイオード動作も確認している。一方で、複雑な構造を持つMOSFETなどのパワーデバイスには、表面ごとの不純物濃度を精密に制御する技術が求められていた。
今回の成果では、同社の成膜技術「Phantom SVD法」により作製したアンドープr-GeO2薄膜にSbをイオン注入。膜厚や結晶構造に大きな変化はなく、ルチル構造も維持されていることをX線回折で確認した。シート抵抗の低下やC-V測定の結果から、n型の導電性が付与されたことが確認されている。
また、C-V特性から得られたドナー不純物密度分布は、ドーピングが成膜時ではなくイオン注入によるものであることを示している。今後はI-V測定や質量分析法(SIMS)による分析を通じて、注入された元素がSbであるかを含めた評価を進めていく予定だ。
同社は今後、イオン注入条件の最適化とパワーデバイス試作を通じて、r-GeO2の実用化を推進していく。
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