触媒劣化の要因である「硫黄」への耐久性を備えた新型メタン酸化触媒「MOC1-30」を田中貴金属工業が開発した。
田中貴金属の産業用貴金属事業を展開する田中貴金属工業は2026年8月4日、硫黄(S)耐久性に優れ、長期間にわたり高い浄化性能を維持するメタン酸化触媒「MOC1-30」シリーズ(以下、MOC1-30)を開発したと発表した。
近年、メタンが主成分の天然ガスを燃料とする発電設備や船舶などの普及に伴い、メタン排出量のさらなる低減に向けた技術開発への期待が高まっている。メタンはCO2に比べて温室効果が高く、気候変動対策の観点から国際的にも排出削減の機運が高まっており、排出規制の強化とともにその処理技術の高度化が求められている。
一方で、液化天然ガス(LNG)由来のガスや付臭剤には硫黄成分が含まれる場合が多く、従来のメタン酸化触媒では、硫黄の影響により触媒活性が低下するという課題があった。さらに、高温環境下では触媒反応の元となる白金(Pt)粒子の肥大化(粗大化)が進行し、触媒性能が低下することも知られている。また、一般的には脱硫装置によって硫黄成分を除去する方法が採用されているが、完全に除去することは難しく、微量の硫黄でも触媒劣化の要因となることが課題となっていた。
このため、硫黄存在下および高温環境下においても触媒性能の低下を抑制し、安定して性能を維持できるメタン酸化触媒の開発が求められていた。
そこで、田中貴金属はMOC1-30を開発した。MOC1-30は、独自技術により、触媒表面に吸着した硫黄を三酸化硫黄(SO3)として脱離させる機能と、Pt粒子と担体との結合を維持する機能を有している。これにより、硫黄による反応阻害およびPt粒子の肥大化を抑制し、触媒性能の低下を防ぐことで、長期間にわたり安定した触媒活性を維持する。
また、同社は、原料の調達から材料開発、製造、販売、リサイクルまでを一貫して行う体制を有しており、MOC1-30は使用後の貴金属リサイクルにも対応している。同社は、貴金属前駆体の設計をはじめとする素材開発から触媒製品の開発/製造までを一貫して手掛ける独自の強みを生かし、環境負荷低減と資源循環の両立に貢献する同製品をグローバル市場で展開する。
同製品における触媒の性能評価では、窒素(N2)ガス中にメタン2000ppm(1ppmは0.0001%)、酸素(O2)10%、二酸化硫黄(SO2)1ppmを含むモデルガス条件(SV:2万5000h-1、セル数:100セル、入口ガス温度:350℃)において、1000時間の連続反応後もメタン転化率80%以上を維持することを確認した。
また、二酸化硫黄3ppmを含むモデルガス条件(SV:10万h-1、セル数:400セル、入口ガス温度:400℃)においても、100時間の連続反応後に約90%の高いメタン転化率を維持することが確認できている。さらに、従来のPt系触媒およびパラジウム(Pd)系触媒との比較評価においても優れた耐久性能を示し、従来触媒を大きく上回る結果を確認している。
これらの結果から、MOC1-30は優れた硫黄耐久性とメタン浄化性能を有し、定置型ガスエンジンや船舶用ガスエンジンなどの用途において、排出されるメタンの削減に貢献する触媒として期待される。
同製品の導入により、メタン排出規制への対応が見込める他、触媒の長寿命化による交換頻度の低減を通じて、運用コストの削減にも役立つ。さらに、従来必要とされていた脱硫プロセスの負荷軽減につながる可能性があり、システム全体の効率化にも貢献する。同製品は環境性能と経済性の両立が期待されることに加えて、使用後の触媒は回収/再資源化が可能であり、サステナブルな資源循環にも寄与する見通しだ。
なお、現在、データセンター向け分散電源、非常用発電や船舶動力など、ガスエンジンの活躍領域は拡大している。これに伴い、排出されるメタンの削減に向けた投資需要の増加も見込まれている。同製品は、成長するガスエンジン市場において、カーボンニュートラル社会の実現に貢献する有力な製品だという。
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