2019年から自動運転バスの実用化に取り組んできた相鉄バスだが、2024年に入ってから新たなスタートを切った。新型自動運転バスの実証実験の内容について紹介するとともに、これらの技術を鉄道に応用する可能性を検討してみたい。
相鉄バスは2019年からバス車両の自動運転に取り組んでおり、レベル4(高度運転自動化)での実用化を目指している。当時から就労人口の減少に伴う運転士不足への対応策と位置付け、開発や実証実験に取り組んできた。しかし、2024年に入ってから大きく方針転換し、新たなスタートを切ったのだ。
相鉄バスと群馬大学は2019年4月26日(金曜日)に自動運転に関する共同研究契約を締結し、自動運転バスの実用化に取り組むことを発表した。
当初は大型車での実用化を目指し、日野自動車の「ブルーリボン」を1台導入後、レーザーセンサー、全方位カメラ、LiDAR(Laser Imaging Detection and Ranging、レーザー画像検出と測距)、GNSS(Global Navigation Satellite System:全球測位衛星システム)を搭載。車内の客室部分にモニター、運転席にひじかけを設置した。
日本のバス事業者で、大型の自動運転車両を所有するのは初めて。まずは安全性を重視したレベル2(部分運転実用化)での試験を開始。自動運転に際し、運転士12人が専門教育を受け、実証実験に臨むことになった。
2019年9月14日(土曜日)から10月14日(月曜日・体育の日)までの月、金、土、日曜日に限り、大型バスによる営業運行での自動運転をよこはま動物園正門−里山ガーデン正面入口間(約900m、運賃無料)で実施。道路の最高速度が時速30kmのところ、自動運転バスは時速20kmで走行。後方のデジタル方向幕は「低速運転中」を掲示した。
16日間の運行ながら、4907人が乗車。行楽の足はもちろんのこと、自動運転バスに対する関心の高さも表したと言えよう。
2020年2月18日(火曜日)、旭営業所(横浜市旭区)内に自動運転のルートを整備したことを発表。さらに日本モビリティが開発協力に名を連ね、遠隔監視/操作システムによる自動運転バスを開発した。遠隔地から操作、操縦ができるようにした他、アクシデントなどが発生した際、乗客への呼びかけができるよう、遠隔監視カメラ画面、遠隔操作タッチパネル画面、遠隔操作コントローラー、遠隔音声ヘッドセットを旭営業所に設置。車内も遠隔監視カメラ(一部マイクつき)を追設した。
同年7月27日(月曜日)に旭営業所、7月29日(水曜日)によこはま動物園正門−里山ガーデン正面入口間で、遠隔監視/操作システムによる自動運転バスの実証実験を実施。大型バスでは日本初の「運転席無人」「遠隔地に運転士」ながら、レベル2運転のため、車内には別の運転士が「保安者」として運転席の隣に立ち、常にサイドブレーキを握った状態で安全確認を行う。
遠隔監視/操作システムによる自動運転バスの営業運転は、10月5日(月曜日)、14日(水曜日)に同区間で実施。引き続き時速20km運転のため、後ろから自動車が接近したときは止まって道を譲った。
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