また、導電助剤によって電極の安定性を向上させるアプローチのひとつとして「グラフェンメソスポンジ(GMS)」が検討されています。
GMSの弾性変形性による機械的強度の維持や、電気化学的安定性の高さによる劣化抑制などの特性向上効果が期待されています。
バインダーが担う結着材としての役割も、電極の全体的な機械的強度を保つためには重要です。電極合材と集電体(アルミニウム箔や銅箔)との良好な接着によって、充放電サイクル中の応力に対する耐性を向上させます。
そしてもちろん、電極合材を支える集電体そのものの「機械的強度」や「化学的安定性」も重要な要素です。
金属箔の適切な厚みと機械的強度は電極全体の強度に影響しますし、化学的安定性の観点からは電解液との反応性の低さや長期的な腐食耐性なども求められます。
これらの要素を適切に設計/制御することで、リチウムイオン電池電極の機械的強度と化学的安定性を向上させ、電池の性能、充放電サイクル特性や寿命を最適化することができます。
今回は、リチウムイオン電池の電極に求められる4つの特性の中から「機械的強度」と「化学的安定性」について、主に電極構造や材料に注目して解説してきました。
次回のコラムでは、電極の製造工程がこれらの特性に与える影響について、さらに詳しく解説していきたいと思います。(次回に続く)
株式会社カーリット 生産本部 受託試験部 電池試験所
研究開発職を経て、2018年より現職。カーリットにて、電池の充放電受託試験に従事。受託評価を通して電池産業に貢献できるよう、日々業務に取り組んでいる。「超逆境クイズバトル!!99人の壁」(フジテレビ系)にジャンル「電池」「小学理科」で出演。
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