今回はリチウムイオン電池に用いられる「負極活物質」について解説していきたいと思います。負極活物質の開発は「リチウム」を活用したエネルギー密度の向上と安全性の担保の兼ね合いが常に求められています。
前回(リチウムイオン電池の性能を左右する「活物質」とは?【正極編】)はリチウムイオン電池に用いられる代表的な「正極活物質」について解説しました。
活物質は容量や起電力といった電池の基本特性を左右する重要な材料です。本コラムで度々紹介している以下の反応式で考えると、正極はLiCoO2(コバルト酸リチウム)、負極はC(炭素)が、それぞれの電極に使われている活物質です。
正極:Li(1-x)CoO2+xLi++xe-←→LiCoO2
負極:LixC←→C+xLi++xe-
電池全体:Li(1-x)CoO2+LixC←→LiCoO2+C
今回はリチウムイオン電池に用いられる「負極活物質」について解説していきたいと思います。負極活物質の開発は「リチウム」を活用したエネルギー密度の向上と安全性の担保の兼ね合いが常に求められています。
電池のエネルギー密度を高めるという観点から考えると、負極活物質は「金属リチウム」を用いるのが最良です。しかし、金属リチウムそのものを用いた二次電池の実用化は安全性の面で課題があります。
金属リチウム負極を用いた二次電池の場合、連載第2回(リチウムイオン電池で発熱や発火が起きる要因を整理しよう)で紹介した発火要因の1つ「リチウム金属の析出」が生じやすく、安全性を担保することが極めて困難です。過去にもリチウム金属二次電池が製品化されたことがありますが、発火事故が多発し、大きな問題となりました。そのため、化学的に不安定な「リチウム」をいかに二次電池として安全に活用するかという視点で開発がなされてきました。
その結果、第3回(リチウムイオンが充放電に関与すれば、どんな材料でも「リチウムイオン電池」!?)で紹介したように、「金属リチウム」ではなく「リチウムイオン」のみが充放電に関与する「リチウムイオン電池」が生まれました。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.