生産設備を設計する際は、安全距離を考えながら検討を進めていく必要があります。安全距離とは「主に作業者の安全を守ることを目的に、作動する機械や装置と作業者との間に、一定の距離を確保するために設けるスペースのこと」をいいます。
基本的には、設備の中で危険な箇所をカバーで覆うなど、物理的に遮蔽(しゃへい)することで対策をしていくのですが、ワークの取り出し口などのように、どうしても開口や隙間の設計が必要な箇所が出てきます。
そのため、こういった開口や隙間については、ISOで“作業員への安全が確保できるよう安全距離を確保する必要があること”が規定されています。
このような安全対策は、特別な理由がない限りは必ず取り入れるべきですし、中には生産設備の安全が担保されているかの審査が義務化されている現場もあります。
ただ実は、この安全距離の確保によって、想像以上に設備の設置可能スペースが制限されることも珍しくありません。特に、前述したワークの供給部/排出部におけるストッカーの部分で安全対策を求められることが多いので、設備内にストッカーを設けるようなケースでは十分に注意しましょう。
設備設計では、設備のメンテナンススペースについての配慮も必要です。ただ、メンテナンススペースについて、仕様書に記載されているケースはほぼありません。なぜなら、設計が始まってもいない段階では、どの部分に対して、どのようなメンテナンスが必要になるのかを具体的に決められないからです。
そんなこともあり、仕様書に記載されている内容だけに集中し過ぎるあまり、ついついメンテナンスのことを忘れてしまう……といったことも起こり得ます。
メンテナンスが必要な代表的な項目として、
などがあります。
設計がある程度進んだ段階で、これらの作業が可能かどうかを適宜チェックしながら設計を進めていくことが重要です。
基本的には「メンテナンスに関わる部品は“設備の外側に配置する”」よう意識するのがオススメです。そうすることで、少し手を伸ばすだけで作業ができるのでメンテナンス性が向上しますし、メンテナンススペースも最小限に抑えられます。
逆に、奥まったところに配置してしまうと、
などを非常に細かく確認する必要が出てきますし、それぞれについて作業スペースを確保しなければなりません。
また、このような設計をしてしまうと、仮に設計部門と生産技術部門が「その設計で問題ない」と判断したとしても、筆者の経験上、保全部門とのDR(デザインレビュー)の際に、設計変更を指示される可能性が高くなります。
納品された生産設備を、その後何年にもわたって運用し続けることから、“保全部門の意見は尊重されるべき”というのが暗黙の了解です。そのため、ある程度設備の全体像が出来上がってきた段階から、定期的にメンテナンス性についても確認しながら設計を進めるようにしましょう。 (次回へ続く)
りびぃ
「ものづくりのススメ」サイト運営者
2015年、大手設備メーカーの機械設計職に従事。2020年にベンチャーの設備メーカーで機械設計職に従事するとともに、同年から副業として機械設計のための学習ブログ「ものづくりのススメ」の運営をスタートさせる。2022年から機械設計会社で設計職を担当している。
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