約8割がパートタイマーの業界も! 産業別の労働者数データを調べてみる小川製作所のスキマ時間にながめる経済データ(24)(3/3 ページ)

» 2024年06月25日 05時30分 公開
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「宿泊業、飲食サービス業」の8割がパートタイマー

 最後に、産業別のパートタイム雇用率の計算した結果をご紹介しましょう。パートタイム雇用率は、全体の労働者数に対するパートタイム労働者の割合です。全体の平均値としては徐々に上昇していて、近年では30%を超えている状況です。

 産業別に見てみると、どのような状況でしょうか。

図3:産業別のパートタイム雇用率[クリックして拡大] 出所:毎月勤労統計調査より筆者にて作成 図3:産業別のパートタイム雇用率[クリックして拡大] 出所:毎月勤労統計調査より筆者にて作成

 産業別のパートタイム雇用率を計算した結果が図3です。パートタイム雇用率が高いと、それだけその産業に占めるパートタイム労働者の割合が大きいことを示します。

 大きく労働者の増加している「宿泊業、飲食サービス業」は、パートタイム雇用率も徐々に上昇していて今や8割に達するような状況です。労働者の8割がパートタイム労働者によって成立している産業ということになりますね。

 「卸売業、小売業」も40%以上と高い水準ですが、パートタイム雇用率は横ばいです。労働者数の増えている「医療、福祉」「教育、学習支援業」はパートタイム雇用率も上昇傾向が続き、今や3割以上がパートタイム労働者ということになるようです。

 一方で、減少しているとはいえ、労働者数の多い製造業ではパートタイム雇用率は13%程度と比較的低い水準です。製造業は自働化も進んでいますし、パートタイム労働者が手作業で働いているイメージとは、既に大きく異なっているのかもしれませんね。

日本の働き方の変化に特徴あり

 今回は産業別の労働者数の変化をご紹介しました。働き方が多様化し、パートタイム労働を選択する人も増えていますが、特にサービス業や公共/福祉的な産業での労働者の増加が大きいようです。

 パートタイム労働者は、一般労働者に比べて年間の労働時間数が短いため、年収は低くなる傾向にありますね。日本の実質賃金(年収ベース)は減少が続いているというニュースを見聞きしますが、これはパートタイム労働者の増加による影響も大きいと考えられます。

 より実態に即したデータを見るのであれば、時給換算での賃金水準の変化を調べるべきだという指摘もあります。次回は、産業ごとの一般労働者とパートタイム労働者の時給の違いについてご紹介する予定です。

参考:毎月勤労統計調査の産業分類

 毎月勤労統計調査は、国際標準産業分類に沿って産業の分類をしているようです。

 ここでは国際標準産業分類(ISIC REV4)と、毎月勤労統計調査の分類の対応について整理した表をご紹介いたします。

 それぞれが完全に1対1で対応しているわけではありませんが、おおむねの区分は把握できると思います。ご参考までに。

国際標準産業分類と毎月勤労統計調査の分類対応表
国際標準産業分類(ISIC REV4) 毎月勤労統計調査
A 農林漁業 -
B 鉱業及び採石業 C 鉱業,採石業,砂利採取業
C 製造業 E 製造業
D 電気、ガス、蒸気及び空調供給業 F 電気・ガス・熱供給・水道業
E 水供給業、下水処理並びに廃棄物管理及び浄化活動
F 建設業 D 建設業
G 卸売・小売業、自動車・オートバイ修理業 I 卸売業,小売業
H 運輸・保管業 H 運輸業,郵便業
I 宿泊・飲食業 M 宿泊業,飲食サービス業
J 情報通信業 G 情報通信業
K 金融・保険業 J 金融業,保険業
L 不動産業 K 不動産業,物品賃貸業
M 専門、科学及び技術サービス業 L 学術研究,専門・技術サービス業
N 管理・支援サービス業 -
O 公務及び国防、強制社会保障事業 -
P 教育 O 教育,学習支援業
Q 保健衛生及び社会事業 P 医療,福祉
R 芸術、娯楽、レクリエーション業 N 生活関連サービス業,娯楽業
Q 複合サービス事業
R サービス業(他に分類されないもの)
S その他のサービス業

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⇒前回連載の「『ファクト』から考える中小製造業の生きる道」はこちら

筆者紹介

小川真由(おがわ まさよし)
株式会社小川製作所 取締役

 慶應義塾大学 理工学部卒業(義塾賞受賞)、同大学院 理工学研究科 修士課程(専門はシステム工学、航空宇宙工学)修了後、富士重工業株式会社(現 株式会社SUBARU)航空宇宙カンパニーにて新規航空機の開発業務に従事。精密機械加工メーカーにて修業後、現職。

 医療器具や食品加工機械分野での溶接・バフ研磨などの職人技術による部品製作、5軸加工などを駆使した航空機や半導体製造装置など先端分野の精密部品の供給、3D CADを活用した開発支援事業などを展開。日本の経済統計についてブログやTwitterでの情報発信も行っている。


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