ビジネスを進める上で、日本経済の立ち位置を知ることはとても大切です。本連載では「スキマ時間に読める経済データ」をテーマに、役立つ情報を皆さんと共有していきます。今回はパートタイム労働者の「平均時給」を一般労働者と比較してみます。
今回は、働き方による産業別の平均時給の変化についてご紹介します。参照するのは、毎月勤労統計調査です。
前回ご紹介した通り、働き方が多様化し、日本ではパートタイム労働者が増えています。特に、サービス業や公共/福祉的な産業で労働者数が増え、その多くがパートタイム労働者となっています。
最近は同一労働同一賃金という言葉をよく聞くようになりました。同じ仕事をしていれば、同じ賃金水準にすべきということで広く意識されていると思います。一般労働者とパートタイム労働者では年間の労働時間が異なりますので、年収だと差が出るのは当然です。では、時給水準ではどうでしょうか?
今回は働き方の違いによる、産業別の時給水準について比較してみたいと思います。その中で平均時給を紹介しますが、これは次のような計算で算出しています。
現金給与総額は、賞与などの所定外給与や、残業代などを含んだ総支給額(年平均値)です。総実労働時間は、時間外労働の時間なども含んだ労働時間の合計値(年平均値)です。
まずは、一般労働者の産業別平均時給から眺めてみましょう。
図1は産業別に見た一般労働者の平均時給です。
一般労働者の平均時給は、全体の平均値(調査産業計、黒色の線)で見ると、1997年をピークにしていったん緩やかに減少し、2012年ごろから緩やかに上昇しています。ピークとなった1997年で2504円、2012年で2381円、最新の2023年で2672円といった数値です。26年間で168円(6.7%)しか上昇していません。
どの産業でもおおむねこの傾向に沿っていますが、産業ごとに水準が異なるのが興味深いですね。産業別に見ると、3つのグループに分かれているように見受けられます。
金融業,保険業(茶)、学術研究,専門・技術サービス業(紫)、情報通信業(ピンク)、教育,学習支援業(薄緑)の上位グループ、卸売業,小売業(赤)、製造業(青)、建設業(水色)、医療,福祉(緑)の中位グループ、宿泊業,飲食サービス業(薄ピンク)の下位グループです。
前回ご紹介した通り、上位グループに入る賃金水準の高い産業はいずれも労働者数の少ない産業です。この中でも、労働者数がやや多く、さらに増加傾向にある教育,学習支援業の時給水準が顕著に下がっているのが印象的ですね。2002年に3757円だったのが、2023年には3266円と500円近く減少しています。
中位グループはいずれも労働者数の多い産業です。このうち、最も労働者数の増加が大きな医療,福祉は、2000年時点では全体の平均値を超える水準でしたが、近年では平均値を下回ります。
一方で、労働者の減っている建設業は近年の上昇傾向が強く、平均値を下回る水準から、相応する水準にまで達しています。一般労働者に限ってみれば、産業による傾向の違いや、近年は上昇傾向が見られるものの、長期間横ばい傾向が続いていたことになります。
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