以上の知見を基に、図6に示すポンプ(圧力源)、慣性要素、抵抗要素、容量要素からなる流路網を考える。このように、流れのフローを流路網として表現し、解析する方法を「流路網解析」という。図を式で表現すると、分岐点における流量の連続条件(電流則)から、
が、慣性要素、抵抗要素、容量要素(ここでは、断熱変化する空気だまりを想定)の定義から、
が、ポンプの定義式から、
が成り立つ。L=ρl/A、C1=V1/K1、C2=V2/K2である。
ポンプのモデリング方法の詳細は次回説明するが、今回は結果のみ記す。すなわち、ポンプは、
で表現する。nはポンプの回転数、a、bはポンプ特性から決まる定数である。定常状態でのポンプ特性とシステム抵抗の関係を図7に示す。両者の交点、すなわち、
で決まる流量と圧力が定常状態での運転点となる。
前項の図6の流路網解析を「Modelica」テキストコードで表現すると以下となる(リスト1)。空気だまりは断熱変化を仮定している。また、ポンプ特性、慣性要素、抵抗要素、容量要素の諸元は下記(parameter Real)とした。
model fluidCircuit Real Q; Real P; Real Q12; Real Q1V; Real Q2V; Real P1; Real P2; parameter Real a=15.0; parameter Real b=30.0; parameter Real N=1.0; parameter Real R=1.0; parameter Real inertia=2.0; parameter Real V=0.1; parameter Real K=1/0.7e-5; equation P=-(b/a)*Q*N+b*N^2; P=R*Q12*abs(Q12)+inertia*der(Q12); Q=Q12+Q1V; Q12=Q2V+Q; P=P1-P2; Q1V=(V/K)*der(P1); Q2V=(V/K)*der(P2); end fluidCircuit;
上記の実行例(解析結果)を図8に示す。ポンプ起動時は流体の慣性により、ポンプは一種の締め切り運転となり、流量ゼロ、圧力=締め切り圧力となり、以降、流体が流れることにより定常運転状態に移行していることが分かる。図7でポンプ特性のx切片がq=a=15、y切片がp=b=30となる。起動時は、まだ流れが動いていないのでシステム抵抗はゼロなのでp=0、q=15となり、図では赤線と青線が重なっていて読み取れないが、t=0では、p=0(赤線)、q=15(青線)となる。流れが動き始めると流体の慣性により瞬間的にシステム抵抗∞となり、p=30、q=0となる。その後、定常状態P=20.86、q=4.57(図7の2次方程式を解くことにより算出できる)に漸近する。
次回は、今回説明したフローで考える流れのモデリングの具体例と流れの3Dモデリングと1Dモデリングとの関係について紹介する。 (次回へ続く)
大富浩一(https://1dcae.jp/profile/)
日本機械学会 設計研究会
本研究会では、“ものづくりをもっと良いものへ”を目指して、種々の活動を行っている。1Dモデリングはその活動の一つである。
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