慶應義塾大学と九州大学は、アレルギー治療に用いることが可能な、安全性および治療効率の高い経口ナノ粒子製剤の開発に成功した。これまで適用が難しかった、重症患者や乳幼児も適用できる可能性がある。
慶應義塾大学は2024年1月11日、アレルギー治療に用いることが可能な、安全性および治療効率が高い経口ナノ粒子製剤の開発に成功したと発表した。これまで適用が難しかった、重症患者や乳幼児に適用できる可能性がある。九州大学との共同研究による成果だ。
開発したナノ粒子製剤は、酵母細胞壁から抽出したマンナンでアレルゲンタンパク質を被膜したナノ粒子だ。アレルゲンがマンナンで被膜しているため、アナフィラキシー応答が回避され安全性が高い。また、マンナンにより樹状細胞が寛容性に誘導されるため、制御性T細胞が効率的に誘導できる。
開発したナノ粒子をアレルギーモデルマウスに経口投与したところ、従来のアレルゲンタンパク質をそのまま用いる方法と比べて、アナフィラキシー応答が生じず、かつ高い治療効果が得られた。
アレルギーには、アレルギー体質になると、次々と別のアレルギーに罹患し続ける「アレルギーマーチ」と呼ばれる問題がある。新開発のナノ粒子製剤は、安全性の高さから乳幼児への適用も期待され、アレルギーマーチを早期に断ち切れる可能性が示唆される。
九州大学病院で既に臨床研究を開始しており、10年以内の実用化を目指している。
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