東京大学と大阪大学は、マウスを用いた実験により、精子を作る精巣と精子を貯蔵する精巣上体の老化が、精子の受精率や受精卵の発生率の低下を引き起こし、妊よう性低下につながることを発見した。
東京大学は2024年1月5日、マウスを用いた実験で、精子を作る精巣と精子を貯蔵する精巣上体の老化が、精子の受精率や受精卵の発生率の低下を引き起こし、妊よう性低下につながることを発表した。大阪大学との共同研究による成果だ。
妊よう性とは、妊娠し、子を授かるために必要な能力で、雌雄どちらにも関係する。今回の研究では、遺伝的および環境的に統制された雄マウスを用いて、雄性哺乳類の加齢における妊よう性や精子機能の変化を特定し、その原因を解明した。
若齢期から老齢期までの雄マウスを、若い雌マウスと交配し続けたところ、雄の加齢とともに雌が出産する子の数が徐々に減少し、妊よう性が低下した。妊よう性の低下と、交配頻度や雄性ホルモンであるテストステロン量に関連はなかった。
一方、精巣と精巣上体では、それぞれの体細胞で老化関連βガラクトシダーゼ活性が上昇しており、老化細胞による両器官の炎症が確認された。このことから、妊よう性低下の原因は、精巣や精巣上体の老化による機能低下であることが示された。
精巣を構成し、精子を生産する場となる精細管の内部を確認すると、加齢した精巣では、精子の元となる精原細胞の増殖が低下していた。また、精子を精細管の内腔に放出して精巣上体に移行させる機能が低下することで、精巣上体の精子数が減少していた。加齢した精巣上体では、貯蔵された精子の形態や微細構造に異常が蓄積しており、それが原因で、精子の運動性の低下や受精率の低下を招いていた。
次に、加齢精子と受精した受精卵の発生、発育を見ると、着床前の段階まで正常に発生できた割合を示す発生率は低下していたが、精子の受精率低下との相関はなかった。このことから、加齢した精巣上体は精巣よりもDNA損傷を受けやすく、その環境下で貯蔵された精子にDNA損傷が蓄積し、発生率低下の原因となることが分かった。
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