慶應義塾大学ら19機関が参加した共同研究グループは、国内初の無作為化比較試験により、精神疾患に対するオンライン診療の治療効果が、対面診療と同等であることを明らかにした。
慶應義塾大学は2023年12月18日、国内19の精神科医療機関が参加したJ-PROTECTの試験により、複数の精神疾患に対するオンライン診療の治療効果が、対面診療と同等であることを明らかにしたと発表した。
J-PROTECT試験は、オンライン診療と対面診療について、通常の保険診療の枠組みでの治療効果、治療継続率、患者の満足度などを比較する目的で実施された、国内初の無作為化比較試験だ。
同試験は、うつ病、不安症、強迫症の外来患者199人を、スマートフォンなどのビデオ通話を利用したオンライン診療と対面診療を併用するグループと、対面診療のみのグループに分け、24週間の外来診療を実施した。有効性の評価には、精神的側面のQOLサマリースコアである「SF-36MCS」を用いた。
その結果、SF-36MCSについて、オンライン診療を併用するグループの治療効果は、対面診療のみのグループと比較して劣っていないことが分かった。他に、治療継続率や満足度、疾患の重症度など、ほぼ全ての副次評価項目でも有意差は認められなかった。一方、オンライン診療併用群は、対面診療群と比べて、通院時間が短いこと、通院費用が安価であることも明らかとなった。
治療効果の検証とともに、同試験では治療を担当した医師に対するアンケート調査を実施した。医師の感想として、オンライン診療でも対面診療と同様にコミュニケーションが取れていること、オンライン診療によって医師が患者のニーズに対応しやすくなること、オンライン診療普及に向けて制度上の一番の課題となるのが診療報酬であることなどが示された。
オンライン診療は諸外国では以前から利用されているが、日本では診療報酬上の制限が強いこともあり、現在、精神科領域で利用されているケースは極めて少ない。同研究でオンライン診療の有効性が科学的に示されたことで、今後普及に向けた政策的議論につながることが期待される。
J-PROTECTには、慶應義塾大学の他、大阪医科薬科大学、京都府立医科大学、総合病院、診療所など国内19の精神科医療機関が参加した。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.