エーザイと大分大学は、リストバンド型生体センサーから取得した生体データを活用し、アルツハイマー病の病理である脳内アミロイドベータの蓄積を予測する機械学習モデルを開発した。
エーザイは2023年12月26日、大分大学と共同で、リストバンド型生体センサーから取得した生体データを活用し、脳内のアミロイドベータ蓄積を予測する機械学習モデルを開発したと発表した。
構築した機械学習モデルは、リストバンド型生体センサーにより取得する身体活動、睡眠、脈拍などの「生体データ」と、問診から得た家族との同居、就労、外出頻度などの「生活データ」、年齢や教育歴、既往歴などの「当事者背景」を組み合わせて、脳内のアミロイドPET検査陽性者を予測する。
機械学習モデル構築のためのデータは、2015年8月〜2019年9月に大分県臼杵市で実施した、65歳以上の高齢者を対象とした前向きコホートデータを利用した。軽度認知障害または主観的な記憶障害がある122人が、3カ月ごとに約7日間リストバンド型生体センサーを装着し、生活データを収集するための問診、1年に1回のアミロイドPET検査を3年間受けた。
予測モデルの構築には、サポートベクターマシン、Elastic Net、ロジスティック回帰の3つの機械学習技術を用いた。予測モデルの性能を評価した結果、予測評価の指標であるAUC(Area Under the Curve)は、スクリーニングに適した性能であると評価できる0.79だった。
構築した予測モデルは、簡便に利用できることから、アミロイドPETや脳脊髄液検査を必要とする人の身体的負担や費用を軽減する。今後、アルツハイマー病の重要な病理である脳内アミロイドベータ蓄積の新スクリーニング法開発につながることが期待される。
アルツハイマー病は発症の約20年前からアミロイドベータが脳内に蓄積するとされ、国内ではアミロイドベータを標的とした治療薬が承認されている。治療で最大限の効果を引き出すには、発症の前段階で脳内のアミロイドベータ蓄積を検出する必要がある。しかし、アミロイドPETや脳脊髄液検査など現在利用できる手法は、検査できる施設数が限られ、検査費用や侵襲性などの面で課題がある。
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