東北大学は、カテキンとフッ化物を併用することで、口腔内微生物による酸の産生を効率良く抑制できることを明らかにした。カテキンとフッ化物の相乗作用を利用した、新しいむし歯予防法の開発が期待される。
東北大学は2023年11月2日、緑茶由来のカテキンとフッ化物を併用することで、口腔内微生物による酸の産生を効率良く抑制できることを明らかにしたと発表した。四川大学華西口腔医学院との共同研究による成果だ。
むし歯は、口内の微生物が産生する酸が原因となる。抗酸化作用などさまざまな健康効果を持つカテキンは、酸の産生を抑制する。
研究グループは、構造が異なる各種カテキンと細菌細胞膜に存在する糖取り込み酵素(EIIC)との相互作用を分子ドッキングシミュレーションにより検討した。その結果、エピガロカテキンガレート、エピカテキンガレート、エピガロカテキン、エピカテキン、カテキンの順でEIICに効率的に結合した。このことから、ガロイル化カテキンの方がEIICと効率的に結合し、糖の取り込みを阻害することが示された。
また、むし歯を予防することで知られているフッ化物とカテキンを組み合わせると、代表的なむし歯関連細菌であるStreptococcus mutans(S. mutans)の酸産生がより効率的に抑制されることが分かった。この効果は、中性環境下よりむし歯が起こりやすい酸性環境下で高かった。
酸性環境ではフッ素イオンは細菌内に流入しやすいため、カテキンが細菌細胞膜に存在するフッ素イオン排出チャンネルを不活化して、フッ素イオンの細胞内蓄積を引き起こす。これにより、酸の産生を抑制する効果が相乗的に増強すると考えられる。
フッ化物はむし歯予防において広く用いられており、歯表面の修復、強化に加え、微生物の酸の産生を抑制する。一方、緑茶と同等の濃度のカテキンは、細菌を死滅させることはないが、酸の産生を抑制することを、東北大学は以前の研究で明らかにしていた。今後、カテキンとフッ化物の相乗作用を利用した、新しいむし歯予防法の開発が期待される。
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