富士フイルムは、紫外線や熱で酸化した皮脂である過酸化脂質と分解物が、皮膚のバリア機能を低下させる一因を解明した。セラミドなどの産生に重要な遺伝子や、バリア機能維持関連因子の遺伝子発現量を減少させる。
富士フイルムは2023年11月1日、紫外線や熱で酸化した皮脂である過酸化脂質とその分解物が、皮膚のバリア機能を低下させる一因を解明したと発表した。バリア機能を維持するセラミドなどの産生に重要な遺伝子や、皮膚のバリア機能維持に関わる重要3因子の遺伝子の発現量を減少させた。
紫外線や熱の影響で産生される過酸化脂質は、その影響を受け続けるとアクロレインなどの分解物を産生する。
今回の研究では、皮脂に多く含まれているリノール酸の過酸化脂質である過酸化リノール酸とその分解物であるアクロレインを用いた。
まず、過酸化リノール酸またはアクロレインを皮膚モデルの角層に添加し、皮膚バリア機能の指標であるTER値を測定した。その結果、過酸化リノール酸では約70%、アクロレインでは約40%TER値が減少しており、皮膚バリア機能の低下が示された。
濃度300ppmのアクロレインを加えて72時間培養した皮膚モデルの角層に、外部からの侵入異物を想定した蛍光試薬を添加すると、アクロレイン未添加の場合と比べてより多くの蛍光試薬が皮膚内部に浸透した。このことからも、皮膚バリアの機能が低下していることが実証された。
次に、ヒトの表皮細胞に過酸化リノール酸またはアクロレインを添加し、皮膚のバリア機能維持に重要なセラミドとアシルセラミドに対する影響を調べた。その結果、セラミド産生酵素SPTLC3、アシルセラミド産生酵素CERS3の遺伝子発現量はそれぞれ低下した。
また、角層細胞の構造を形成し外部因子の侵入防止に重要な因子インボルクリン(INV)およびロリクロン(LOR)、表皮細胞同士を密に接着して肌内部の水分蒸散抑制に関わるオクルーディン(OCLN)の遺伝子発現量を、アクロレインが減少させることも明らかとなった。さらに、アクロレインは角層表面だけでなく毛穴の中にも存在していることが示された。
同社は今回の成果を、皮膚のバリア機能低下を予防する成分の処方設計に応用するなど、化粧品の開発に生かすとしている。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.