東京工業大学は、脳表での電位記録と電気刺激の両立が可能な厚さ約8μmの薄膜硬膜下電極を開発した。複雑な曲面を持つ生体組織表面にも食品用ラップのように密着することが可能だ。
東京工業大学は2023年9月15日、脳表での電位記録と電気刺激の両立が可能な厚さ約8μmの薄膜硬膜下電極を開発したと発表した。市販の硬膜下電極の約12分の1の厚さで、複雑な曲面を持つ生体組織表面にも食品用ラップのように密着することが可能だ。横浜市立大学との共同研究の成果だ。
脳表に密着できる硬膜下電極を作製するために、まず、エラストマー製の厚さ約4μmの薄膜表面に金ナノインクをインクジェット印刷し、導電配線と多点状の電極パターンを形成した。次に、この多点電極にもう1枚のエラストマー薄膜を絶縁層として重ね貼りし、柔軟性を持つ薄膜電極を作製した。
作製した薄膜硬膜下電極は、ヒトの脳組織モデル表面に密着できることを確認している。
また、ラット特有のヒゲ、脳応答回路である大脳のバレル皮質表面に薄膜電極を貼付した動物実験では、薄膜電極が十分な空間分解能を有し、ヒゲ刺激による誘発電位が記録できることを確認した。
薬剤誘発型てんかんモデルのラットを用いた試験では、てんかん様脳波の計測にも成功している。
また、薄膜電極に搭載されている微小電極の1極から電気刺激を与えてヒゲ運動を誘発させた際の、1本のヒゲの根元における筋電位を計測できた。
難治性てんかん患者では、てんかん発作の原因となる脳部位を明らかにするために脳表脳波記録が実施される。しかし、現在使用されている硬膜下電極は、力学的ミスマッチを原因とする問題があり、電極の薄膜化が求められている。
今回開発した薄膜硬膜下電極は、難治性てんかんの診断における利用だけでなく、ニューロモデュレーションやブレインマシンインタフェースなど、神経や脳の刺激による新規治療法への応用が期待される。
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