国内の多施設共同研究により、統合失調症とうつ病の診療ガイドラインの講習会を受講した精神科医は、診療ガイドラインの推奨する処方に一致する薬物療法を実施するようになることが明らかとなった。
国立精神・神経医療研究センター(NCNP)は2023年9月11日、統合失調症とうつ病の診療ガイドラインの社会実装手法を確立したと発表した。診療ガイドラインの講習会を受講した精神科医は、診療ガイドラインの推奨する処方に一致する薬物療法を実施するようになることを見出した。
今回の研究は、EGUIDEプロジェクト(精神科医療の普及と教育に対するガイドラインの効果に関する研究)に参加する日本全国の研究機関との共同研究体制で実施。診療ガイドラインの講習会は、2016〜2019年に176の医療機関、782人の精神科医に対して行われた。
共同研究に参加した医療機関での、統合失調症患者とうつ病患者に対するガイドライン推奨治療の施行割合を比較したところ、講習会に参加していない医師が担当した場合と比べて、参加した医師が担当している方が有意に高かった。また、ガイドラインの推奨治療率が経年的に向上することも明らかとなった。
研究グループはこれまでに、統合失調症とうつ病、それぞれの標準的治療である抗精神病薬と抗うつ薬の単剤治療率について、医療施設によって大きくばらつきがあり、全国どこでも標準的な専門医療が受けられるよう医療機関の格差を是正する必要があることを報告している。
EGUIDEプロジェクトは、全国270以上の精神科医療施設が参加し、精神科医に対する治療ガイドラインの講習や同ガイドラインの効果に関する研究を実施している。今回の解析結果から、講習会の受講が処方に関する行動変容につながり、診療ガイドラインの社会実装に役立つことが示された。
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