東北大学は、ハブ毒から精製した蛇毒メタロプロテアーゼがアルツハイマー病の原因となるアミロイドβを無害なペプチドに分解し、ヒト培養細胞からのアミロイドβ産生量を大幅に減少させることを発見した。
東北大学は2023年8月31日、ハブの粗毒から蛇毒メタロプロテアーゼ(SVMPs)を精製し、SVMPsがアルツハイマー病の原因となるアミロイドβ(Aβ)を無害なペプチドに分解することで、ヒト細胞からのAβ産生量を大幅に減少させることを発見したと発表した。東京大学との共同研究による成果だ。
ハブ毒が持つSVMPsは、アミロイド前駆体タンパク質(APP)を分解するプロテアーゼとして知られるヒトのADAMsファミリータンパク質と共通の祖先から進化したと考えられている。ADAMsによるAPP分解は、APPからAβが生成する反応と競合するため、ADAMsの存在によりAβの生成が抑制される。
SVMPsは金属アフィニティー法により精製し、ハブに存在する11種類のSVMPのうち9種類のゲノムが同定された。また、SVMPsの混合物をAβを分泌する細胞の培養液に添加すると、培地中のAβ量は約10%まで減少した。
合成Aβを用いた実験では、SVMPsがAβ40、Aβ42を直接切断することが示された。さらに、切断部位はADAMsがAPPを切断する部位と同じであり、有毒なAβを無毒な短いペプチドp3に変換することが明らかとなった。
SVMPsは、Aβペプチドが凝集したAβ繊維を分解しないものの、単量体Aβを分解することでAβ線維の生成を抑制することも示された。
今後は、ゲノムが同定された9種類のAβ分解活性とヒトへの毒性を解析し、マウスなどの生体を用いた実験で効果の証明を進める。
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