デジタルツインを実現するCAEの真価

振動形状をスローモーション表示してどこが変形しているかを確認するCAEと計測技術を使った振動・騒音対策(14)(1/4 ページ)

“解析専任者に連絡する前に設計者がやるべきこと”を主眼に置き、CAEと計測技術を用いた振動・騒音対策の考え方やその手順を解説する連載。連載第14回では、時刻歴応答解析と同等の結果が得られる振動測定について取り上げる。

» 2023年09月14日 07時00分 公開

 前回はシミュレーションによる振動解析のうちの「時刻歴応答解析」について取り上げました。今回はこれに相当する振動測定です。振動形状をスローモーション表示することで実際にどこが変形しているかを見つけます。

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モチーフとなる機械

 図1にモチーフとなる機械を示します。前回と同じですね。リニアアクチュエーター、ステージ、プレート、フレーム、脚、コラム、加工点などから構成されています。ステージの上に将来商品となる製品の部品が載っています。

モチーフとなる機械 図1 モチーフとなる機械[クリックで拡大]

 X軸リニアアクチュエーターとY軸リニアアクチュエーターを組み合わせて「XYステージ」あるいは「XYテーブル」などと呼ばれています。XYステージの動作を図2に示します。

XYステージの動作 図2 XYステージの動作[クリックで拡大]

 親亀の上には子亀が載っているのが常なので、X軸駆動をさせたときはY軸アクチュエーターとステージがX方向に移動することになります。X軸リニアアクチュエーターを急発進させたときの装置に発生する振動を測定します。

測定手段

 3軸加速度ピックアップ、1軸加速度ピックアップ、4台のアンプ兼電源(PCB Piezotronics製480B10型電源)、4chのデシタルオシロスコープ、ノートPCを用意しました。図3に測定系を示します。

測定系 図3 測定系[クリックで拡大]

 3軸加速度ピックアップはサイコロのような形をしており、X方向、Y方向、Z方向の加速度を測定します。振動形状をスローモーション表示することを目的とするため、振動変位が必要となります。そこで、アナログの積分器が2台入ったアンプ兼電源を用います。連載第10回で紹介したものですね。

 加速度をスローモーション表示してもよいのですが、判断を間違える可能性があると思っています。1軸加速度ピックアップの出力をデシタルオシロスコープの信号取り込みのためのトリガー信号とします。1軸加速度ピックアップの取り付け位置は必ず動くところ、今回の場合はXYテーブルのステージのX方向となります。1軸加速度ピックアップの出力信号は積分する必要はありませんが、3軸加速度ピックアップの出力は前述した積分器を使って変位信号とします。

 気の利いた制御屋さんならば、装置のコントローラーから5[V]のトリガー信号を出してくれるので、これをch1につなげたこともありました。4chのモーダル解析ソフト付きFFTアナライザが市販されているのでこれを使ってもOKです。

 図4に測定位置を示します。40点くらいでしょうか。これくらいならば半日で測定が完了します。数μmの変位を測定することが目的ですが、ステージ上に加速度ピックアップを取り付けたときはX方向とY方向の変位は数十mmとなり変位信号がオーバーレンジするので、X方向とY方向のデータは破棄せざるを得ません。

測定位置 図4 測定位置[クリックで拡大]
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