連載第13回で紹介した時刻歴応答解析結果と同様に、動画1でも装置が前後に大きく揺れる様子と加工点が高い周波数でブルブルと震えている様子が分かりますが、問題としている加工点とステージの相対変位の原因を見つけるには少し難があります。
そこで、装置が前後に大きく揺れる成分をアニメーションから除去してみます。図8の左側に測定点18のX方向変位を示します。A部に注目すると少し波形が乱れています。おそらく加工点がブルブルと震えている成分と推測されます。図8の右側に測定データの移動平均を示します。移動平均はExcelのAverage関数で計算できますね。今回は20個分のデータの平均値としました。測定点18の位置は図4に記入しておきました。
では、測定データから移動平均を引き算しましょう。図9のようにブルブルと震えている成分を抽出できました。
では、測定データから移動平均を引き算したものをアニメーション表示してみましょう。動画2となりました。
コラムが倒れて加工点が回転しながら前後に変位していることが分かります。間欠的な動作をする機械では振動が短時間で減衰するため、実験モーダル解析をするより、各点の変位をスローモーション表示した方が対策を立てやすいことがあります。
図9の操作は、周波数の低い成分を除去したものでハイパスフィルターを通したようなものです。一方、加速度を2回積分して変位信号としましたが、積分はローバスフィルターのようなものです。結局、ローバスフィルターを通して低周波成分を強調した後、ハイパスフィルターを通して高周波成分を強調していました。何をやっているか分からない操作でしたが、低周波成分の除去が必要と判断したのは、装置の変形形態が2つあり、それらが加算されたものを測定したからです。
1つ目の変形形態は装置が大きく前後に揺れるもの、2つ目の変形形態は加工点がブルブルと震えるものです。今回の例は、ばね定数の小さな脚が付いた装置であり、1つ目の変形形態が目立っていたため、測定データから除去する必要がありました。今回は低周波成分を除去しましたが、そうではないケースも多分にあるため、アニメーション表示をしてみて判断してください。また、加速度信号をアニメーション表示することはお勧めできず、変位信号を使うべきだと考えます。
このような測定により、振動形態を可視化して問題のある箇所を見つけます。次に、対策を立案し、時刻歴応答解析などのシミュレーションを行って対策案が十分な効果があるかを予測し、効果があることを確認できたら対策改造をすることになります。そして、対策効果についても同様の測定作業で確認を行います。以上で振動測定は終了です。
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