なお、NTTイノベーティブデバイスが手掛ける光電融合デバイスとしては、NTTエレクトロニクスが供給してきた第1世代に当たる「COSA(Coherent Optical Sub-Assembly)」と、2023年に商用化したばかりの第2世代に当たる「CoPKG(光・電子コパッケージ)」がある。
COSAでは、押野氏が挙げる光電融合デバイスを構成するキーデバイスの内、アナログICとシリコンフォトニクス変調素子が一体になっており、ロジックICと薄膜レーザー素子は外付けになっている。CoPKGでは、COSAからさらに一歩進んでDSPの一体化まで実現できている。デバイスの外形寸法はCOSAの13.5×10.5×2.2mmから、CoPKGは11.5×21.1×3mmと大きくなっている。COSAもCoPKGも、基本的には従来の用途である通信向けのデバイスとなる。
2025年に商用化を計画しているのが「光エンジン」と呼ぶ第3世代デバイスである。一般的なデバイス開発のロードマップでは、世代が進むごとに小型化や高機能化が進むが、光エンジンの外形寸法はCOSAやCoPKGよりもはるかに大きい20×50×7mmとなっている。これは、光エンジンの用途がデータセンター内でサーバ間をつなげる光通信スイッチを向けに適用することが想定されているからで、ロジックICとアナログIC、シリコンフォトニクス変調素子だけでなく、光ファイバーと接続するための構造部品であるFAU(Fiber Array Unit)も一体化しているためだ。消費電力については、CoPKGと比べて半減することを想定している。
2028年の商用化を想定する第4世代デバイスでは、ロジックIC、アナログIC、シリコンフォトニクス変調素子だけでなく、薄膜レーザー素子も一体化される。第4世代デバイスは半導体パッケージ内に組み込まれ、プリント基板上に実装されるプロセッサやメモリなどICの間を光通信でつなげる「半導体パッケージ間通信」に利用される見込みだ。外形寸法は5×10×3mm。また、チップレットとして提供する場合には、顧客の要望に合わせてロジックICであるDSPの機能は光電融合デバイス側に組み込まない可能性もある。
そして、2032年に商用化を見込む第5世代デバイスは、半導体パッケージ内部における電気信号のやりとりを光信号に置き換える「半導体パッケージ内通信」に利用されることを想定している。外形寸法は2×5×2mmとなっている。
塚野氏は「売上高が1000億円を突破するのは、第3世代デバイスの光エンジンの量産が軌道に乗るころだろう。第4世代デバイス以降は、光電融合デバイスをより薄く小さく安くしてPCやスマートフォンなどの民生機器向けにも採用してもらえるようにしたい。コンピューティングを超えて次の段階に行く上で重要なのが自動車向けだと考えている。現在の電気信号を用いているワイヤハーネスを光信号に置き換えることで、大幅な軽量化や小型化が図れるだろう」と述べている。
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