NTTが光電融合デバイスの専門企業を設立「自動車やスマホにも光通信を広げる」組み込み開発ニュース(1/2 ページ)

NTTグループで光電融合デバイスを手掛けるNTTイノベーティブデバイスが同社設立の背景や事業方針などについて説明。光電融合デバイスの適用領域を通信からコンピューティングに広げることで、早期に年間売上高1000億円の突破を目指す。

» 2023年09月07日 07時00分 公開
[朴尚洙MONOist]
NTTイノベーティブデバイスの塚野英博氏 NTTイノベーティブデバイスの塚野英博氏

 NTTイノベーティブデバイスは2023年9月6日、東京都内で会見を開き、同社の設立の背景や事業方針などについて説明した。同社 代表取締役社長の塚野英博氏は「これまで通信や長距離ネットワークなどが主な用途だった光電融合デバイスの用途をサーバなどのコンピューティングに拡大し、将来的には自動車やPC、スマートフォンなどにも適用できるようにしていく。前身のNTTエレクトロニクスの年間売上高は約380億円だったが、これを早期に4桁億円(1000億円以上)にしたい」と語る。

 NTTイノベーティブデバイスは、光通信関連デバイスの開発と量産、販売を手掛ける1982年創業のNTTエレクトロニクスと、NTT研究所の光通信関連デバイスの研究開発の人員を統合する形で2023年8月1日に発足した。横浜市神奈川区の本社や約66億円の資本金などはNTTエレクトロニクスからそのまま引き継いでいる。NTTイノベーティブデバイスとしての発足に合わせて、親会社であるNTT(日本電信電話)から300億円の資本注入が行われているが、これは資本剰余金として計上されている。従業員数はNTTイノベーティブデバイス本体の566人を含めて、グループ全体で1148人となる(2023年8月1日時点)。

NTTイノベーティブデバイスの母体NTTイノベーティブデバイスの会社概要 NTTイノベーティブデバイスの母体(左)と会社概要(右)[クリックで拡大] 出所:NTTイノベーティブデバイス

 傘下のグループ会社には、北米、欧州、中国を担当する4つの販売会社がある。製造子会社は、古河電工との合弁で運営するPLC(光平面回路)を製造するNTTデバイスオプテック、同じく古河電工との合弁で光半導体を製造する古河ファイテルオプティカルデバイス、工場支援のNTTデバイスコプロの3社になる。これらの他、先端技術開発の子会社として、光電融合実装を手掛けるNTTデバイスクロステクノロジ、アナログICの技術を担う米国のfJscalerがあり、シリコンフォトニクスの研究開発を行う米国のAloe Semiconductorにも出資している。NTTイノベーティブデバイスグループとして、光電融合デバイスについて、設計開発だけでなく製造と販売も手掛けていることが特徴だ。

NTTイノベーティブデバイスのグループ構成 NTTイノベーティブデバイスのグループ構成[クリックで拡大] 出所:NTTイノベーティブデバイス

光電融合デバイスとは何か

 NTTイノベーティブデバイスが手掛ける光電融合デバイスは、システムやネットワーク、デバイスなどの間で、電気信号よりも高速に通信が可能な光信号でつなぐためのデバイスである。送信したい信号を処理するロジックICであるDSP、DSPの出力信号の増幅や変換を行うアナログIC、アナログICが出力する電気信号を光信号に変換するシリコンフォトニクス変調素子、シリコンフォトニクス変調素子と連携して光信号をレーザーとして出力する薄膜レーザー素子から構成されている。塚野氏は「光電融合デバイスはロジックIC、アナログIC、シリコンフォトニクス変調素子/薄膜レーザー素子という3つのキーデバイスから構成されている。ロジックICは購入品だが信号処理には高度なソフトウェア技術が必要だ。光電融合デバイスの技術で世界をリードしてるだけでなく、日本や米国などで採用実績を積み重ねてきた点も競合他社との違いになるだろう」と説明する。

光電融合デバイスを構成する3つのキーデバイス 光電融合デバイスでは、光導波路の設計技術や光調芯/検査などの量産技術開発に加えて、3つのキーデバイスが重要な役割を果たす[クリックで拡大] 出所:NTTイノベーティブデバイス

 40年以上の歴史を積み重ねてきたNTTエレクトロニクスから、NTTの研究開発人員が合流して新たにNTTイノベーティブデバイスを立ち上げた背景には「通信や長距離ネットワークにとどまらず、光電融合デバイスの適用範囲を広げていきたい」(塚野氏)という思いがあるからだ。NTTは、光ベースの技術によるネットワーク構想「IOWN」を展開しているが、IOWNは単に従来の通信ネットワークを高速化するだけでなく、データセンター内のサーバ間通信や、半導体パッケージ内の通信について、電気信号から光信号に置き換えることでさらなる技術的飛躍や省電力化などを目指している。そこで、IOWNの構想をより積極的に進めていくために、NTTグループ内にある光電融合デバイスのリソースを1つの会社に集約したのがNTTイノベーティブデバイスとなる。

NTTイノベーティブデバイスのミッション NTTイノベーティブデバイスのミッション[クリックで拡大] 出所:NTTイノベーティブデバイス

 塚野氏はこれまで半導体の進化を支えてきたムーアの法則について「微細化の限界」「発熱の限界」「消費電力の限界」という3つの限界によって、従来の延長で性能向上させることが難しくなってきていることを指摘した。その上で、ムーアの法則を超えるBeyond Mooreとしては、まずは従来通りの半導体微細化を1nm未満のオングストロームレベルまで突き詰めつつ、インタポーザーやチップレットなどを活用した超高密度実装パッケージの採用を進めることが必要であり、これらに加えて「当社が得意とする光電融合デバイスの導入が求められるようになる」(同氏)と強調した。

ムーアの法則の限界Beyond Mooreに向けた3つの方向性 ムーアの法則の限界(左)とBeyond Mooreに向けた3つの方向性(右)[クリックで拡大] 出所:NTTイノベーティブデバイス
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