続いて、生産台数についても確認してみましょう。
図2が2019年の国別の生産台数のグラフです。全世界で9179万台が生産されていて、中国が2572万台(28%)とダントツの水準です。米国は1088万台(12%)で、販売台数よりも随分少ない状況ですね。
逆に日本は965万台(11%)と第3位ですが、米国にかなり近い水準です。国内販売が520万台ほどでしたので、400万台以上は生産が超過しているという計算になりそうです。
第4位はドイツ(466万台、5%)ですが、第5位にインド(452万台、5%)、第6位にメキシコ(399万台、4%)と新興国が続きます。ブラジルやタイ、トルコなども存在感を増しているようです。
下表に各国の生産台数と販売台数をまとめてみましたので、ご参考までに眺めてください。
| 国名 | 生産台数[万台] | 販売台数[万台] | 正味[万台] (生産−販売) |
|---|---|---|---|
| 日本 | 968 | 520 | +448 |
| 中国 | 2572 | 2580 | +8 |
| 米国 | 1088 | 1749 | −661 |
| ドイツ | 466 | 402 | +64 |
| フランス | 220 | 276 | −56 |
| イタリア | 92 | 213 | −121 |
| 韓国 | 395 | 180 | +215 |
| インド | 452 | 382 | +70 |
| メキシコ | 397 | 136 | +261 |
| ブラジル | 295 | 278 | +21 |
| タイ | 295 | 278 | +21 |
| インドネシア | 129 | 103 | +26 |
実は日本は海外生産が進んでいますが、国内の生産も相応に維持されているのです。そして生産台数と販売台数の正味が輸出の超過台数とするならば、日本は他国に比べて圧倒的にプラスになっています。従って、国内で生産された自動車の多くは輸出されていることになります。
ちなみに、日本メーカーの海外生産は合計2000万台ほどですので、輸出台数の4倍以上となります。上の表を見て分かる通り、生産台数と販売台数が近い水準の国が多いですね。アメリカは生産台数も多いですが、販売台数の方が輪をかけて多く、正味で見ると660万台も販売が超過していることになります。
フランス、イタリアは販売台数の方が多く、インド、ブラジル、タイなどでは生産台数の方が多いですね。
いまや自動車生産の多くは中国が担っているわけですが、中国がこんなにも自動車を生産するようになったのはいつ頃からなのでしょうか。加えて、他の先進諸国についても年々生産数が減っているのか、増えているのかも気になりますね。
それでは最後に自動車生産数のデータを時系列で眺めてみましょう。
図3が各国の自動車生産台数の推移となります。中国は2000年ごろから急激に生産台数が増加し、2008〜2009年には日本や米国を抜いています。その後も増加傾向を続けていて、いまでは2500万台を超えているという推移になっています。
他国に目を向けると、日本は2008年までは緩やかに増えていましたが、リーマンショックを機に大きく減少しています。最近では、コロナ禍の影響と思われる減少傾向もみられますね。
米国も2009年までに減少傾向でしたが、その後回復し、長期的に見ると停滞傾向にあります。ドイツやイタリアも同様に停滞傾向ですが、フランスやカナダはかなり減少しているようです。
一方で、インド、メキシコなどは増加傾向となり、近年では存在感を増しています。今後EVの普及が本格化するにつれて勢力図がどのように変化していくのか、とても興味深いですね。
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小川真由(おがわ まさよし)
株式会社小川製作所 取締役
慶應義塾大学 理工学部卒業(義塾賞受賞)、同大学院 理工学研究科 修士課程(専門はシステム工学、航空宇宙工学)修了後、富士重工業株式会社(現 株式会社SUBARU)航空宇宙カンパニーにて新規航空機の開発業務に従事。精密機械加工メーカーにて修業後、現職。
医療器具や食品加工機械分野での溶接・バフ研磨などの職人技術による部品製作、5軸加工などを駆使した航空機や半導体製造装置など先端分野の精密部品の供給、3D CADを活用した開発支援事業等を展開。日本の経済統計についてブログやTwitterでの情報発信も行っている。
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