ビジネスを進める上で、日本経済の立ち位置を知ることはとても大切です。本連載では「スキマ時間に読める経済データ」をテーマに、役立つ情報を皆さんと共有していきます。第14回では、国別の自動車生産/販売台数のデータを見ていきます。
今回は、先進国における製造業の状況についてご紹介したいと思います。参照する統計データはOECDの「Population and employment by main activity」です。
先進国、特に主要国では労働者の製造業離れが進んでいると言われます。製造業のGDPは日本以外の各国で成長を続けていますが、労働者数は各国で減少傾向が続いているようです。
各国の労働者数シェアの長期推移を見れば、その傾向がより明確になると思います。長期的な統計データで、各国の水準を比較してみましょう。
図1のグラフは主要国の労働者数の内、製造業の労働者数シェアを時系列に表現したものです。日本、ドイツ、韓国、イタリアの製造業が比較的盛んな国と、米国、フランス、カナダ、英国の製造業離れが進む国とで、2つのグループに大きく分かれているのが印象的ですね。
ただし、近年は下げ止まりつつありますが、どの国も長期的には製造業のシェアが低下しているという共通点があります。主要国では全体として製造業の労働者数シェアが縮小していくというトレンドがありそうです。
ではその他の国も含めた最新状況を見てみましょう。
図2のグラフは、OECDに加盟する37カ国の製造業の労働者数シェアを降順で並べたものです。
上位はチェコ(25.9%)やポーランド(19.2%)、ハンガリー(18.5%)など東欧諸国が並んでいます。その後にドイツ(16.6%)や韓国(16.0%)、イタリア(15.4%)、日本(15.3%)が続いています。
日本の労働者数シェアは37カ国中13番目となっており、OECDの平均値12.8%を超えます。先進国の中でも製造業で働く労働者が比較的多い国と言えるでしょう。
気になる国も幾つかあります。金融立国としても有名なスイスですが、製造業の労働者数シェアは12.5%でOECD平均値の付近にあります。時計や工作機械などでもスイスは高い工業力を持っていると言われますが、その影響もあるかも知れません。同様の水準にある国としては、ノキアを擁することで有名なフィンランド(12.5%)が目につきます。
米国、フランス、カナダ、英国は10%を切り、特にイギリスは7.4%と先進国で2番目に製造業の労働者数シェアが低い国です。産業革命発祥の地ながら、既に産業の在り方を製造業から他産業へと転換しているという言い方もできそうです。
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