自動車産業も国内では縮小し続けていた! 勢い増す海外生産の経済効果は?小川製作所のスキマ時間にながめる経済データ(12)(1/2 ページ)

ビジネスを進める上で、日本経済の立ち位置を知ることはとても大切です。本連載では「スキマ時間に読める経済データ」をテーマに、役立つ情報を皆さんと共有していきます。第12回では、先進国の産業の生産性や労働者数のシェアを可視化します。

» 2023年07月03日 06時00分 公開

国内製造業を代表する自動車産業!

 今回は、日本の製造業の中でも特に規模の大きな自動車産業についてご紹介します。参照するデータは、日本自動車工業会(JAMA)の統計/資料です。

 日本の製造業を代表する業種と聞けば、真っ先に自動車産業を思い浮かべる方も多いのではないでしょうか。世界トップクラスの自動車メーカーを幾つも抱えており、「過去最高の純利益達成」「世界販売台数トップ」など景気の良さそうなニュースをよく聞く産業ですね。自動車自体、科学技術の粋が結集した最先端の製品というイメージもあり、同産業へのポジティブな印象を強めているように思います。

 製造業に携わる国内の労働者、経営者からすると、日本の自動車産業の現状や今後が気になるところでしょう。自動車産業が多数を占める輸送用機械器具製造業は、縮小する日本の製造業にありながら、近年では数少ない、労働者の増えている産業でもあります。

 ここでは日本の自動車メーカーの自動車生産数や販売数、輸出数についてデータを見ていくことにしましょう。

自動車の国内事業規模は縮小傾向に

 図1は日本国内における四輪車の生産数(青)、販売数(赤)、輸出数(緑)の推移を表しています。

図1:日本の四輪車の生産/販売/輸出[クリックして拡大] 出所:日本自動車工業会の資料/統計を基に筆者作成

 生産数を見ると、1990年代から減少傾向になっていますね。データのある1993年の時点で1100万台程度だったのが、最近の2021年では800万台を割り込み、300万台ほど減少していることになります。

 販売数も同様に1990年代の700万台ほどから500万台弱へと減っています。実は日本の自動車産業では、国内での生産数や販売台数は減少傾向が続いているようです。

 自動車は輸出数が多いイメージがあります。しかし、それも一時期より縮小しているようです。1985年に700万台程度だったのが、2021年には400万台を割り込んでいます。コロナ禍前の2018年でも500万台ほどで、約200万台減っています。

 自動車産業と聞くと華々しいイメージもありますが、国内事業は縮小しているというのは意外な事実ではないでしょうか。

海外生産数は20年間で約4倍に

 自動車は特に海外拠点での生産が進んでいる産業ですね。日本の自動車メーカーによる海外生産についてデータを眺めてみましょう。図2が海外生産の地域別推移です。

図2:日本の四輪車の地域別海外生産数[クリックして拡大] 出所:日本自動車工業会の資料/統計を基に筆者作成

 国内生産が減少傾向だったのに対して、海外生産は大きく成長していることが分かりますね。1998年には500万台ほどだったのが、コロナ禍前の2018年には2000万台に達していて、20年間に約4倍も増えていることになります。

 地域別にみると、北米や欧州、中南米でも増えてはいますが、なんといってもアジア圏での増加が著しいようです。インドネシアやタイ、マレーシアなどで日本メーカーの自動車生産が活発化しているといった報道も良く耳にしますね。

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