TECHNO-FRONTIER 2023/INDUSTRY-FRONTIER 2023 特集

軽量で磁界/電界ノイズのシールド性に優れる新たなシート材料技術

JX金属は、「TECHNO-FRONTIER 2023(テクノフロンティア2023)」(2023年7月26〜28日、東京ビッグサイト)で、開発中の「電磁波シールドシート」と微細配線形成できる「プリンテッドエレクトロニクス」を紹介した。

» 2023年07月27日 10時30分 公開
[遠藤和宏MONOist]

 JX金属は、「TECHNO-FRONTIER 2023(テクノフロンティア2023)」(2023年7月26〜28日、東京ビッグサイト)内の「第36回 EMC・ノイズ対策技術展」で、開発中の「電磁波シールドシート」と微細配線形成できる「プリンテッドエレクトロニクス」を紹介した。

 同社は、銅やレアメタルなどの非鉄金属を扱う企業で、銅に関しては大分市佐賀関にある佐賀関製錬所で地金を生産し、各地の拠点でFPC(フレキシブル基板)用圧延銅箔や半導体のシールドケースなどに加工している、FPC用圧延銅箔については世界シェアのトップで全体の70%以上を占めているという。

 電磁波シールドシートは、樹脂フィルムと銅箔で構成されているため、金属製のシールドケースと置き換えることで、軽量化を図れる。さらに、低周波および高周波領域(kHz帯)の磁界ノイズ、電界ノイズの両方を同時にシールドすることができる。加えて、部品形状に合わせたシールドケースの作成に対応し、さまざまなインサート樹脂との一体成形にも応じる。

 用途としては、電気自動車(EV)やプラグインハイブリッド自動車(PHV)、ドローン、医療機器、電子機器/通信機器の金属製シールドケースの置き換えなどを想定している。導入イメージとしては、エンジンコントロールユニット筐体へのインサート加工と絞り加工によるシールドケースの作成を挙げている。

樹脂筐体への電磁波シールドシート適用例、作成企業は浅野[クリックで拡大] 出所:JX金属
電磁波シールドシートの用途と導入イメージ[クリックで拡大] 出所:JX金属

 JX金属の説明員は「当社では100kHZ〜100MHzの周波数領域で電磁波シールドシートのシールド性能を評価した。その結果、電磁波シールドシートが高い磁界シールド性と電界シールド性能を備えていることが分かった。また、銅箔と樹脂の特殊構成により、高い放熱性を実現している。これにより、筐体内外からの熱を素早く拡散させて局所的な熱の滞留を抑える」と語った。

 プリンテッドエレクトロニクスは、JX金属と産業技術総合研究所(産総研)が共同開発中の技術で、JX金属が高温焼結型の銅微粉を混合した印刷用銅インクの開発を務め、産総研はこのインク用のスクリーンオフセット印刷法の開発を担当している。

プリンテッドエレクトロニクスによるポリイミド上への印刷配線、左から、ラインアンドスペース(L/S)が15/15μmの印刷配線の外観写真、印刷配線の3D画像、L/Sが6/14μmの印刷配線の外観写真[クリックで拡大] 出所:JX金属

 同技術の特徴はシングルミクロンサイズの微細配線を実現できる他、分散性、保管性、低温焼結性に優れる銅インクを活用している点だ。また、使用しているスクリーンオフセット印刷法は、スクリーン印刷により導電インクをシリコンゴム製の転写体に印刷し、転写体から基板へ転写する。

 この印刷法では、導電インク中の溶剤をシリコンゴム転写体が吸収するため、導電インクのにじみを抑えられる。加えて、従来のスクリーン印刷と比べて微細なパターニングも対応している。用途としては自動車の透明ヒーターの配線や電子デバイスの透明アンテナ配線を想定しているという。

スクリーンオフセット印刷法のイメージ[クリックで拡大] 出所:JX金属

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