レゾナックと東北大学は、シリコンウエハーの製造過程で発生する廃棄物であるシリコンスラッジと炭化ケイ素(SiC)粉末を、パワー半導体のSiC単結晶材料の成長用原料として応用するための基礎検討が完了し、活用に向けた本格検討を開始した。
レゾナックと東北大学は2025年7月8日、シリコンウエハーの製造過程で発生する廃棄物であるシリコンスラッジと炭化ケイ素(SiC)粉末を、パワー半導体のSiC単結晶材料の成長用原料として応用するための基礎検討が完了し、活用に向けた本格検討を開始したと発表した。
近年、深刻化している気候変動の状況を踏まえて、その一因とされる温室効果ガス(GHG)の排出量削減に向けた取り組みをさまざまな国が推進している。製造業では、生産過程におけるCO2排出量削減だけでなく、廃棄物の再資源化も求められている。中でも、半導体や太陽光発電パネルに使用されるシリコンウエハーは、切り出しの際に生じるシリコンスラッジが産業廃棄物として大量に廃棄されているため、リサイクルが必要とされている。
そこで、東北大学はCO2をシリコンスラッジと反応させてSiCを合成する技術の研究を進めている。この技術は、CO2を固体と反応させる「鉱物化」を用いたカーボンリサイクル技術を応用することで、シリコンスラッジとCO2を再資源化するとともに、有価なSiC原料を生産する。
レゾナックは、SiC単結晶基板上にエピタキシャル層を成長させたSiCエピタキシャルウエハー(SiCエピウエハー)を製造している。SiCエピウエハーは、電動車(xEV)や産業機器などに使用されるパワー半導体デバイスの材料だ。この材料は、従来のシリコン(Si)ウエハーと比べ、電力変換時の電力損失や熱の発生が少なく、省エネルギー化に貢献する。
しかし、SiCの合成には、高温/高電力が必要で、製造工程における環境負荷の低減が課題となっている。この課題を解決するために、両者は、シリコンスラッジとCO2を原料としたSiC粉末を、パワー半導体に使用するSiC単結晶の成長用原料として応用するための基礎研究を2024年に開始した。
この基礎研究では、東北大学は、カーボンリサイクル実証研究拠点でシリコンスラッジとCO2をマイクロ波で加熱することでSiC粉末を合成する役割を担った。レゾナックは、そのSiC粉末をSiC単結晶基板に応用展開した。両者は、こういった研究で得られた結晶の特性把握などの基礎検討が完了し、応用に向けた本格検討を進める。
今回の技術が実用化されれば、SiC粉末100トン(t)当たりのCO2排出量の削減効果が約110tになる見込みだ。これにより、SiCパワーデバイスの省エネルギー化とCO2排出量の削減に貢献することが期待されている。
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