東レは、ネガ型感光性材料の高感度化技術と硬化応力を制御する感光設計技術を活用し、膜厚200μm、線幅30μmの感光性ポリイミド材料「STF-2000」を開発した。
東レは2025年7月4日、ネガ型感光性材料の高感度化技術と硬化応力を制御する感光設計技術を活用し、膜厚200μm、線幅30μmの感光性ポリイミド材料「STF-2000」を開発したと発表した。
標準形態が液状タイプのSTF-2000は、ポリイミド構造により高い耐熱性、耐薬品性、機械強度、絶縁性を備えている。最大アスペクト比は7と微細加工性も有している。分解されにくく人体や環境への悪影響が懸念されているペルフルオロアルキル化合物およびポリフルオロアルキル化合物(PFAS)が使用されていないため環境にも優しい。エヌーメチルー2ーピロリドン(NMP)などの有機溶媒を使わないアルカリ現像タイプであるため、有機溶媒現像タイプと比べて環境負荷も抑えられる。
STF-2000を適用し厚膜形成することで、電子部品の絶縁性向上が期待できる。高解像度なハイアスペクト配線の形成も可能なため、感光性の物質を塗布した基板に光を照射してパターンを形成するフォトリソグラフィー法を用いた微細な構造設計にも応じる。1回の塗布、露光、現像で厚膜パターンを形成できるため、製造プロセスの簡略化や生産性向上、プロセスコストの低減にも貢献する。加えて、従来のポリイミド材料が適用されてきた膜厚10〜30μmでも、STF-2000は使え、L/S=4μm以下の高解像パターニングが行える。
同社は2025年度の量産に向けSTF-2000の顧客評価を開始している。併せて、STF-2000の厚膜シートタイプの開発も進めている。
エレクトロニクス製品では近年、高性能化に伴い、搭載される電子部品の小型化/高密度化を目的とした微細加工と、多様な形状を設計できる構造材料のニーズが増えている。中でも、現行品の耐熱性、耐薬品性、機械強度、絶縁性、X線特性を保ちつつ、厚膜でも微細加工が行える感光性材料が求められている。
一方、電子部品や微小電気機械システム(MEMS)デバイスの微細加工ではフォトリソグラフィー法が利用されている。この方法では感光性材料の厚膜加工を利用する。しかし、従来の感光性材料を用いた厚膜加工では、厚みが100μm以上になると硬化反応で生じる収縮応力の影響が大きくなり、硬化物の変形やクラックが発生しやすくなる。感光成分が膜表層で露光光を吸収するため、厚みが増すほどパターン加工性も低下する。ハイアスペクトになると、微細パターン深部の現像と除去に時間がかかるため、ビアパータンでは残膜が、ピラー・ストライプ・格子パターンではヨレが生じやすくもなる。従来の薄膜シート材料を積層して露光するフォトリソグラフィー法を使用する場合には、複数の層を重ねるため異物混入や層間剥離も発生しやすかった。
これらの課題を解消するとともに、PFASおよびNMPの不使用を実現する製品として、東レはSTF-2000を開発した。
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