X線で対応できない「数十μm」の金属異物を検知可能なシステムMWE 2025

X線方式や磁気方式の金属検知システムではセンシングが困難だった「数十μm」レベルの金属異物。旭化成はMWE 2025で、この微細な領域をカバーする「ミリ波微小金属検知システム」を紹介した。

» 2025年12月02日 06時30分 公開
[遠藤和宏MONOist]

 旭化成は、マイクロ波技術関連の展示会「MWE 2025(2025 Microwave Workshops and Exhibition)」(会期:2025年11月26〜28日、パシフィコ横浜)に出展し、「ミリ波微小金属検知システム」の開発品を披露した。

システムの感度は直径数十μm

 ミリ波微小金属検知システムは主に、ミリ波空洞共振器、発信側基板、受信側基板で構成される。同システムは、空洞共振器内に設置された糸(繊維)、液体、フィルムなどに含まれる微小な金属をミリ波で検知できる。

ミリ波微小金属検知システムの開発品 ミリ波微小金属検知システムの開発品[クリックで拡大]

 旭化成の説明員は「ミリ波微小金属検知システムは、発信側の基板を用いて、空洞共振器にミリ波を発信し、共振状態とする。その状態の空洞共振器に、微小な金属異物が混入した対象物が設置されると、受信側基板で受け取る共振周波数の波形が変化するため、検知できる」と説明した。

 その上で、「対象物を設置するために共振器に穴を開ける必要があるが、穴が開くと共振特性(感度)は下がる。『どの程度の穴のサイズなら、必要な感度を維持できるか』という点を踏まえて、最適化した設計が独自のノウハウだ」と強みを話す。

ミリ波微小金属検知システムの空洞共振器 ミリ波微小金属検知システムの空洞共振器[クリックで拡大]

 同システムの感度は直径数十マイクロ(μ)mでμmオーダーの金属検知が行える他、サイズも小型で、X線方式や磁気方式の金属検知システムと比べてコストも安価だという。「従来のX線検査機などが『大きな金属異物』を検知するのに対し、ミリ波微小金属検知システムは『数十μm』レベルの小さな金属片の検知に特化している。旭化成エレクトロニクスの車載レーダー用ミリ波レーダーの技術を流用することで、システム全体の小型化と低コスト化を実現した」(旭化成の説明員)。

 用途としては、ガラスファイバーなどの繊維や油などの液体、フィルムにおける金属検知を想定している。「ガラスファイバーの原料であるガラスは、製造過程で微細な金属異物が混入してしまうケースがある。ガラスファイバーに混入した金属異物は、強度不足や断線の原因になる。そのため、X線方式の金属検知システムでは検知できない微細な金属のセンシングはニーズがある。液体に関しては工業用オイルになどに混入した摩耗粉(機械の部品が擦れて発生する微細な金属の粉)の検知で役立つとみている。フィルムに関してはアイデア段階だ」(旭化成の説明員)。

 現在、旭化成ではミリ波微小金属検知システムの開発品の貸し出しなどを行い、ニーズを模索しているという。

 同システムの開発背景に関して、微小金属の混入は工業製品の製造において重大な欠陥となり得る。しかし、従来のフィルム向けの磁気やX線などの手法を用いたインライン検査機では、直径200μm程度の大きさの金属微粒子を検出するのが下限であり、この検出下限が現状の検査機の課題となっていた。そこで、旭化成はミリ波微小金属検知システムを開発した。

ミリ波微小金属検知システムの概要 ミリ波微小金属検知システムの概要[クリックで拡大] 出所:旭化成

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