旭化成は2025~2027年度を対象とした「中期経営計画2027~Tralblaze Together~」を発表した。
旭化成は2025年4月10日、東京都内とオンラインで記者会見を開き、2025~2027年度を対象とした「中期経営計画2027~Tralblaze Together~(以下、中計2027)」を発表した。新たな成長戦略を示すととともに、懸念される米国ドナルド・トランプ政権が行う関税政策の影響について説明した。
中計2027では、2027年度に営業利益2700億円、のれん償却前営業利益3060億円、ROIC(投下資本利益率)6%、ROE(自己資本利益率)9%を目指す。基本方針としては「投資成果創出による利益成長」「構造転換や生産性向上による資本効率改善」「Diversity×Specialtyの進化」を掲げる。
「Diversity×Specialtyの進化」ではマテリアル領域を中心とした事業構成から、ヘルスケア事業や住宅事業の高付加価値事業が高い水準の利益に貢献する姿へシフトする。
マテリアル領域では、過去投資からの利益創出と非連続成長も含め投資を行う重点成長分野にエレクトロニクス事業を、将来の成長ドライバーとする戦略的育成分野にはエナジー&インフラ事業を位置付ける。また、安定して利益を創出する収益基盤維持/拡大分野にカーインテリア事業とコンフォートライフ事業を位置付けた。ケミカル事業については、収益/資本効率が低迷する事業の構造転換を図る収益改善/事業モデル転換分野としている。
電子材料や電子部品を扱うエレクトロニクス事業では独自の技術を生かした半導体プロセス材料などを拡大展開し、2027年度の営業利益を300億円(2024年度比60億円増)とする。セパレーターやイオン交換膜、膜/水処理、水素関連の製品を扱うエナジー&インフラ事業では、リチウムイオン電池(LIB)用湿式セパレータ「ハイポア」を北米で展開する他、イオン交換膜/水素事業の連携により2027年度の営業利益を141億円(同123億円増)に。自動車内装材や人工皮革を扱うカーインテリア事業では、独自のデザイン/加工技術を生かして自動車メーカーへ製品を提供し、2027年度の営業利益を147億円(同32億円増)とする。
繊維や消費財を扱うコンフォートライフ事業では、ニッチで高収益なポジションを強固にし、安定的にキャッシュフローを創出するが、2027年度の営業利益は同22億円減の192億円を計画。樹脂関連のパフォーマンスケミカルや石油化学関連のエッセンシャルケミカルを展開するケミカル事業では、他社との連携により生産などの最適化と強化を行うとともに、グリーン技術を活用した事業モデルに転換するが、2027年度の営業利益は同113億円減の175億円を計画している。
中計2027ではマテリアル領域における約20%の事業で構造転換を目指す。そのうち約半分はケミカル事業関連を想定している。ケミカル事業では「ベストオーナー視点での改革」「他社連携による最適化/強化」「自社での構造転換」といった3つのアプローチで構造改革を推進する。
「ベストオーナー視点での改革」では事業の最適な所有者や経営主体を考えつつ、事業ポートフォリオの見直しを行う。複数の事業で2024年度中の意思決定を目指してベストオーナー視点での改革プロセスを進めたがうまくいかなかったという。しかし、検討を継続し、新中計期間での改革実行を目指す。
「他社連携による最適化/強化」では、エチレン製造設備について、旭化成、三菱ケミカル、三井化学といった3社連携で協議を推進する。複数事業において、マイノリティー化も含む他社との資本連携を検討中だ。
「自社での構造転換」では、プロパン法アクリロニトリル(AN)や、ACH法メチルメタクリレート(MMA)および硫安の製造/販売を行う会社として2006年にタイで設立されたPTT Asahi Chemical(PTTAC)について事業撤退を決定した。低収益/低資本効率の事業についても、縮小/撤退も含めた再構築のアクションを進める。
また、バイオエタノールからのバイオ化学品製造技術や、CO2を原料にエチレンカーボネートやポリカーボネートを製造するプロセス技術、プラントにおける同技術の安定運転ノウハウといったグリーン素材/ソリューションをライセンス化などにより顧客に提供し、収益性/資本効率が高い事業構造を構築する。
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